「音声入力」は、シニアの味方

それでも、文字の入力はかなり面倒です。ただし、これについては、音声入力という強力な手段が利用できます。これを使えば楽々と入力できます。音声入力は、とくにシニアにとっての力強い味方です。私は日常的に音声入力で原稿を書いています。

ただ、これを知らない人が意外に多いので驚きます。「最近、手がうまく動かなくなったので、キーボードから入力するのが面倒になった」という話を聞いたので、「音声入力でやればよいではないか」と助言したところ、「非常によいことを教えてくれた」と言って喜んでいました。
 

これまでは、スマートフォンから音声入力するしか方法がありませんでしたが、いまはウィンドウズのPCでも音声入力ができます。検索をする場合も、いちいちキーボードから入力するのでなく、音声で入力するほうが簡単かもしれません。

『「超」整理法』シリーズで知られる野口悠紀雄が、シニアになったら文章は「音声入力」で書くことを薦める理由_3
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なお、音声認識が可能になったのは、それほど昔のことではありません。私の若い時代に、そうした技術はありませんでした。そして私は、その技術を非常に強く求めていました。1990年代にⅠBMがデスクトップPCで用いる音声書き起こしソフトを作ったのですが、ほとんど使いものになりませんでした。

音声認識が実用になったのは、スマートフォンができてからです。私は、夢の技術が登場したことに感激し、『究極の文章法』(講談社、2016年)という本を書いたほどです。そして、この数年、さらに目覚ましく進歩しています。

文章を書くとき、私は音声入力を活用しています。夜寝ている間に考えていたことを、目覚めた直後に1000字くらいの文章にすることもあるし、散歩中の30分間で3000字の文章を書くこともあります。新しいデジタル技術は敵であるどころか、心強い味方です。

デジタル技術が味方だと分かれば、それを習得することの意味合いも変わってきます。必要に迫られて仕方なくやるのではなく、それを利用して自分を強くして、人生を豊かにする。そう考えられるようになれば、楽しんで学べるようになるでしょう。

文/野口悠紀雄 写真/shutterstock

83歳、いま何より勉強が楽しい
野口悠紀雄
83歳、いま何より勉強が楽しい
2024/4/5
1,650円(税込)
304ページ
ISBN: 978-4763141057
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(もくじより)
■シニアになっても、知的能力は低下しない
■「興味がわかない」と感じるときほど「学び始める」チャンス
■残り時間が少ないから、「5割、逆向き、検索」勉強法
■「取り掛かりの一歩」を人に任せてもいい
■記憶力の衰えを感じたときこそデジタルの出番
■ChatGPTに「ほめてもらう」、ChatGPTを「困らせてみる」
■気にするなと言われても難しい、「心配事」との付き合い方
■配偶者や友人が亡くなる喪失感とどう付き合うか
■脳内「記憶操作」で人生を楽しく振り返る
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