スマートフォンはシニアの敵か?

スマートフォンなどのデジタル機器の扱いがよく分からないと尻込みするシニアが大勢います。ところが、若い人たちは、何の苦もなくこれらの機器をすいすいと使いこなしています。そうした様子を見ると、「デジタル機器はシニアの敵だ」と考えるシニアが出てきても不思議はありません。

多くのシニアが、コンピュータを敵と捉えています。そして、どうしてもそれらを使わなければならないので、辛いけれどもそれらの使い方に習熟し、自分を防御しなければならないと考えています。こう考えると、デジタルはますます敵になってしまいます。

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ところが、考えを変えてスマートフォンを使うようになれば、世界は大きく広がります。メールで簡単にやりとりができるし、オンライン会議ができます。高齢者にとっては最もありがたい手段です。

私は、昔から「敵味方理論」(私の造語です)というものを信じています。それは、「敵だと思うと離れていく。しかし、味方と思うと、近づいてくる」というものです。

この考えは、スマートフォンなどのIT機器に関してとくに言えることです。これらが敵だと考えると使わないので、いつになっても使い方が分かりません。つまり、スマートフォンはどんどん離れていってしまうのです。

ところが何かのきっかけでやってみると、簡単に使えるし、いろいろと役に立つことが分かります。スマートフォンは味方になるわけです。そこで、さまざまな使い方を調べ、スマートフォンの使い方に慣れていきます。そうしているうちに好循環が発生し、スマートフォンは、シニアのためにさまざまな仕事をやってくれるようになるでしょう。

視力の衰えにもITで対処

特に視力の衰えのせいで勉強が進まないと訴える人もいるかもしれません。しかし、IT機器で見ているなら、文字を拡大することもできるし、オーディオブックなら、そもそも目を使わずに情報をインプットできます。

ノートパソコンをディスプレイにつなげると、大きな画面で見ることができます。ダークモードにすれば(バックグラウンドを暗くすれば)、目が疲れません。

これだけ補う方法があるのですから、もはや加齢による衰えは勉強をしない言い訳にはならないと心得るべきです。

スマートフォンの唯一の欠点は、まぶしいこと、そして、字も小さすぎるということです。これは目にとってあまりよい環境ではありません。一つの方法は、ダークモードを採用することです。それでも字の大きさについては画面全体の制約がありますから、難しい。長い仕事には、やはりPCかタブレットのほうがよいでしょう。