過去にもあった食品・薬物による悲惨な健康被害事件
22日の発表後、小林製薬には健康被害報告が続々と寄せられている。28日朝までに、紅麹コレステヘルプを使っていた4人の死亡情報が明らかにされた。厚労省は、このうち一人は「急性腎疾患」だとし、ほかの3人もいずれも腎疾患があったもようだ。入院が確認できた人は93人、小林製薬に寄せられた相談は約1万2000件に上っている。
問題はサプリ摂取者に限らない。小林製薬は紅麹を食品の原料として52社に販売していたことを24日になってメディアに説明。
「この52社に自主回収を呼びかける電話を小林製薬がかけ始めたのも22日夕の発表と同時で、連絡を受けた企業は紅麹を使った商品の回収に追われました。さらに、この52社から別の企業に紅麹が売られていたケースがあり、27日の政府関係省庁連絡会議には小林製薬性の紅麹を扱っている会社が170社以上にあることが報告されました」(社会部デスク)
小林製薬は「紅麹の原料は2023年に18.5トン生産し、原因物質の可能性がある『想定していない成分』が含まれている可能性があるのは、自社のサプリ製品に使った2.4トンと、直接取引のある52の食品企業に販売した6.9トンの一部。残る9.2トンは着色や風味付けに使う食品用として企業に販売したが『想定していない成分』は含まれていない」と説明している。
メディアの集計では、この紅麹を使っていた商品で自主回収が始まっているのは、紀文食品「国産いか使用いか塩辛」▽大塚食品「あわ 紅豆腐」▽竹屋「タケヤみそ『塩分ひかえめ紅麹仕立て』」▽イオントップバリュベストプライス「回鍋肉の素」、同「高菜ピラフ」▽宝酒造「松竹梅白壁蔵『澪』PREMIUM〈ROSE〉」――など多岐にわたっている。小林製薬の紅麹が含まれていることを知らずに食品を口にした人は相当数に上っているとみられ、食品メーカーは回収に追われている。
日本ではこれまでも、1955年ごろから森永乳業徳島工場製の粉ミルクに猛毒のヒ素が混入し飲用した乳幼児130人が死亡、多数が中毒になった「森永ヒ素ミルク事件」や、1980年代に加熱処理をしなかった血液凝固因子製剤を投与された多数の血友病患者がHIVウイルスに感染した薬害エイズ事件など、食品・薬物による悲惨な健康被害事件が起きている。今回、小林製薬の問題の3サプリは「機能性表示食品」を名乗っており、食品と薬の「中間」のような印象を与えるが、政府が安全性を検証せずに売られており、薬とは程遠い。
「特定保健用職員(トクホ)は有効性と安全性を国が審議し許可を与えた食品ですが、機能性表示食品は許可を受けず、事業者の責任で表示しているだけです。安倍政権時代の2015年に規制緩和の一環で制度が創設されました。今回の事態を受けて国は届け出のある6000件超の機能性食品を緊急点検することを決めました」(同前)