なぜドバイ警察は詐欺や金融犯罪などの知能犯は見逃すのか
ドバイは犯罪者たちにとって過ごしやすい環境が整っているということだが、ドバイに逃げ込む犯罪者の特徴についても聞いてみた。
「多くは詐欺や資金洗浄など金銭の絡む犯罪に手を染めた犯罪者・容疑者が逃げ込みます。いわゆる金持ちの知能犯です。
そしてドバイ政府としても、外国人が現地でお金を使ってくれることで国が潤うので、こうした犯罪者が国際指名手配されても捜査にあまり精を出さないのが実情です。金銭の履歴などを調べることは非常に手間がかかることもあるため、容疑の段階ではなかなか本腰を入れて捜査に踏み切らないのでしょう」
それでも国際指名手配されている者がなかなか捕まらないというのは、やはり解せない。いったいどういった事情があるのか。
「例えば日本で犯罪を起こしてドバイに逃げ込んだ犯罪者や容疑者を確保するとなった場合、まずフランスにあるインターポール(ICPO=国際刑事警察機構)を介して、UAEの警察当局に捜査を依頼します。
それからドバイ警察当局へと捜査依頼が伝達されるわけですが、このUAEからドバイへの引継ぎがうまくいかないことが多いのです。
UAEは首長国連邦の在り方、いわば大枠のルールを決めているのですが、ドバイの捜査当局には独自の外国人に対するルールや規制があります。そのルールの違いから突然捜査の協力が及ばなくなることがしばしばあるようです」
だが、冒頭で紹介したXのポストでは、ドバイ警察が過去2年間で400人以上の国際指名手配犯を逮捕したという記事が出ていたと語られていた。確かに海外メディアではそのように報道されており、記事には「殺人」「武装強盗」「過失致死」「宝石窃盗」「窃盗未遂」などの罪に問われていた容疑者を国外へ送還し、また指名手配者の関係当局に引き渡したと記されている。
「つまりは、ドバイ警察が捜査に精力的に取り組む事件とそうではない事件がある、ということです。その線引きは、“自国民を脅かす影響を及ぼしかねない存在であるかどうか”が重要なポイントになっています。
ドバイ警察はすべての犯罪者や容疑者にやさしいということではなく、殺人、窃盗など重罪を犯した犯罪者や容疑者は国民に脅威を及ぼし、治安を乱す可能性があると考えています。そうした危険因子は排除すべきという思考を持って活動しているのでしょう。
ほかにも最近ドバイ警察が積極的に摘発している犯罪が、麻薬関連です。麻薬関連の犯罪は世界規模で問題になっていますので、国際的批判を避け、犯罪の撲滅に貢献していることをアピールするため、現地の警察も積極的に捜査に取り組んでいます」