「インボイスで本名バレ」が明らかになった国会質疑

ここまではインボイスの金銭的なデメリットを中心に説明してきたが、インボイスには他にもとんでもないデメリットが隠されている。冒頭にも紹介した通り、ペンネーム・芸名で活動しているクリエーターの本名がバレる可能性があるのだ。

この懸念が事実であると判明した上、政府は全く対策をしていないことが露呈してしまった国会質疑をご紹介する。

*実際の質疑映像は冒頭に紹介したYouTube動画の5分28秒から視聴可能(約2分間)。外部配信サイトで動画を再生できない場合、筆者のYouTubeチャンネル「犬飼淳 / Jun Inukai」で視聴可能(動画タイトルは「インボイス導入で損する業種 5選」)

【自民党・藤末健三】ペンネームで活動する中で、このインボイスを使うことによって自分個人の名前が表に出てしまうのではないか。取引相手との間に伝わるんじゃないかと。(過去に)個人名が流出して、そしてストーカー的な被害に遭ったという話を聞いておりまして。そういう方々が実名の公開、相手側に実名が伝わるんじゃないかと懸念されているんですけど、そういうプライバシー保護の対応はどうなっているかを教えていただきたいと思います。

【政府参考人・重藤哲郎 国税庁次長】インボイス発行事業者の登録情報につきましては、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトにおいて公表するということになっております。個人事業者の公表事項につきまして原則として、氏名、登録番号、登録年月日という法令において定められた必要最低限の事項とすることとしておりまして、そのような形でプライバシーにも配慮しているところでございます。

【自民党・藤末健三】ペンネームや匿名で活動するフリーランスの方々は多いと思います、データはないですけれど。そういう方々がプライバシーをすでに気にされているということでありますので、是非何らかの対策を検討いただきたいと思います。

出典:2022年3月16日 参議院 財政金融委員会

インボイス制度導入で「あの漫画家の本名がバレる」は本当か?_a
筆者のYouTube動画より。藤末健三 議員の「インボイスで本名がバレる」という懸念が事実であると露呈した国会質疑

質問した藤末健三議員の追及が甘いので、何となく聞いていると国税庁があたかもプライバシーに配慮しているように錯覚するが、実際は全く違う。

というのも、年収1000万円以下のフリーランス・個人事業主が課税事業者に登録すると、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトに掲載されるのだが、「公開する情報は必要最低限にするが、公開情報に氏名は含まれる」と国税庁次長が平然と答弁しているのだ。

にもかかわらず氏名(本名)が公開されることによるストーカー被害などの懸念への回答はゼロ。これが、つい3ヶ月前の政府公式見解であり、それは現在も変わっていない。