自分好みの泉質を探してみる
筆者は、飲泉が「何に効くのか」よりも「美味しいかどうか」の方が重要だと考えている。含有成分の少ない単純温泉は口当たりが良く飲みやすいものが多いが、一方で味気がないとも言える。
泉質(含まれている成分や濃度)によって味や喉ごしが大きく異なるし、湯温や湧出してからの時間によっても味は変化する。飲泉の魅力が感じられる個性的な温泉地をいくつか紹介するので、興味があればぜひ試飲していただきたい。
日本三古湯にも数えられる有馬温泉には多種多様な泉質の湯が湧出しており、温泉街から「タンサン坂」と呼ばれる坂を上っていくと、飲泉可能な二酸化炭素泉(炭酸泉)の源泉がある。飲むと少し鉄っぽいエグ味を感じるものの、シュワッとした舌感はまさに炭酸水で、ガムシロップなどの甘味を少し足せばさらに美味しくなりそう。
ちなみに、有馬は日本のサイダー発祥の地とも言われており(諸説あり)、この温泉を使用した名産の「炭酸せんべい」もサクサクしていて美味しい。
世界屈指の放射能泉で、橋から丸見えの河原風呂でも知られる三朝温泉にも、数か所の飲泉所がある。放射能泉は、温泉に含まれるラジウムやラドンなどの放射能が細胞に刺激を与えて活性化させる「ホルミシス効果」があると言われており、飲泉してみると身体の中から力が湧いてくるような気分になれる(あくまでも個人の感想です)。
味自体は特に「ラドン味」を感じることもなく、さっぱりめで比較的飲みやすい印象。
全国から末期がん患者が集まってくることで有名な玉川温泉。日本一酸性の強い温泉と言われており(pH1.13)、お湯に浸かっているだけで肌がピリピリしてきて、これ…溶ける…?と怖くなってくるレベル。
浴室内に飲泉コーナーがあるのだが、こちらももちろん強酸性。「必ず薄めて飲むように」とか「飲泉した後は真水でうがいしないと歯が溶けるよ」みたいなことが書かれた注意書きが貼られている。
ビビりながら飲んでみると、意外とさっぱりレモン風味。酸味が強くて、やや苦味もあるけど悪くない。飲泉後のうがいは忘れないように。
全国には神社やお寺の下に源泉のある温泉も少なくないが、湯村温泉の荒湯源泉は、この温泉を開湯したと言われる慈覚大師の像の下にお湯がグツグツと湧き出ており、すき間の穴から柄杓ですくって飲泉するスタイル。
源泉温度が国内トップクラスの98℃なのでとにかく熱いのだが、味はほんのり硫黄が香る程度で、クセがなく飲みやすい。冬場は体もポカポカに癒されて、ありがたい気持ちになれる。すぐ隣の湯壺では野菜や卵を茹でられるので、温泉卵をツマミに温泉をグビっと飲るのも悪くない。