心地よさの秘密その①、「とにかくすべてにこだわった」

まずはサウナ室。リニューアル前は、多くの銭湯で見られる遠赤外線のサウナヒーターを使っていたのを、満載したサウナストーンに水をかけて蒸気を発生(ロウリュ)させられる、フィンランド製のパワフルなストーブに。広さもそれまでの6~7人が入れるサイズから、座面が3段の、20人ほどが入れる大きさにまで拡張(※男湯)。室内の明るさや、温度や蒸気がうまく室内をめぐるよう換気孔の位置も研究し、座るベンチ(座面)の「高さ」や「幅」「奥行き」に至るまで、徹底的に検討したそう。

東京・東中野、最強の銭湯サウナ「松本湯」はいかにして爆誕したか  老舗銭湯・三代目の挑戦――「町の銭湯がここまでやるんだ、と思わせたかった」_c
より自分に向き合えるよう光の量も抑え、音楽も静かなジャジーなものを、とこだわりは多岐に…。写真では撮影のため明るくしているが、実際は隣の人の顔がやっとわかる程度の暗さ

「よく“一番こだわったのはどこですか?”って聞かれるんだけど、答えられないんです。“全部”なんだよね(笑)。自分が行ってみてよかったものを徹底的に検証して、いいと思ったものはすべて取り入れたいと。
ただ、いろんな要素が複雑に絡み合うので、設計段階でも、工事が始まってからも『ここをこうしたら、あっちはこうなるね』『ここをこうすればかなり良くなるけど、今度はあっちが…』って、そういう変更や微調整の繰り返し。サウナストーブも『もっといい熱さにできるんじゃないか』って、メインのストーブに加えて座面の下にもボナストーブというヒーターを入れ、熱源を“ダブル”にしてみようかって。実際に結果がどうなるかは分からないけど、まずはやってみよう。試してダメだったら、また修正だ!って(笑)。もう、ずっとそんなことをやってました」

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20分に一度、自動で石に水がかかる「オートロウリュ」が発動。ダブル熱源が作る温度と湿度とのセッティングも徹底的に調整、毎日最高の状態を目指している