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疲労脳──「血液脳関門」が壊れて悪物質が通過

脳にかかわる健康およびエネルギーの問題の多くは、もとをたどると「神経炎症」と「血液脳関門の漏れ」に行きつく。

脳には、全長600キロに及ぶ血管がつながっていて、酸素と栄養素を脳に届けると同時に、代謝廃棄物を脳から運び出している。

脳が体からの信号を読み間違え“意図的に疲れた状態”をつくり出してしまう「慢性神経炎症」のメカニズムとは?_1
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この果てしなく長い血管は、不必要な分子が脳のなかに漏れ出さないように「血液脳関門(BBB)」でコーティングされている。血液脳関門はいわば脳を守る門番で【5】、腸障壁が体を守る門番として働くのに似ている。

血液脳関門は、外部の悪い物質──毒素、病原菌、誤った免疫細胞、血流中の異分子など──から脳を守るのに欠かせない。一方、グルコース、炭水化物、タンパク質、アミノ酸、ケトン体、ビタミン、ミネラル、免疫細胞とサイトカイン、ホルモンなどは積極的に脳内に通す必要がある。

問題は、環境に存在する毒素や慢性的なストレス、質のよくない食事のせいで血液脳関門が徐々に機能不全を起こし(つまり「漏れる」ようになり)、通してはいけない分子を通してしまうようになることだ。

慢性疲労を覚える人たちには、この血液脳関門機能不全の兆候があることが明らかになっている。これが、頭にもやのかかったような状態や認知能力の衰え、気分障害が見られる理由だ。

血液脳関門に漏れがあると、脳は次の2つの大打撃を受ける。

①「神経毒性分子」が脳内に侵入し、神経炎症とニューロン損傷を引き起こす
②代謝上の廃棄物および毒性廃棄物が排出されなくなり、脳にさらなる被害をもたらす

血液脳関門の不調が、神経変性と認知機能障害の必要十分条件だということは、疑う余地のない事実だ。

神経炎症はニューロンの起動を遅くしたり、異常なほど活発にさせて消耗させたりする。それによって脳細胞間の連絡に不具合が生じ、認知機能が低下するのだ。

こうして、ミトコンドリアの機能不全が起こり、体全体のエネルギー関連の制御の乱れにつながっていくというわけだ。