コロナ禍が「孤独の美化」を加速させた
コロナ禍で自死者が増加したという報道がありました。特に、若い世代や女性が増えたという点は注目すべきかもしれません。
そこに未遂も含めた著名人の自死報道が相次ぎました。「どうして? なぜこの人が?」という衝撃とともに、社会に喪失感や不安感が広まっていきました。コロナ禍では、行動制限、在宅での就学、在宅勤務の長期化で、人との交流が希薄になっていきました。人間関係は面倒なものでもあります。当時、避けることができるのであれば、これを奇貨として面倒な交流は減らしてしまおうと考えた人も多かったのではないでしょうか。
けれども一方で、やはり人との交流が減ったことにより、心身に変調をきたす人が増えたという報道があったというのは興味深いことです。
旭川医科大学と北海道大学の研究では、「新型コロナウイルスのパンデミックが、人々のメンタルヘルスに大きな影響を与えており、それが日本の自死率に影響している」としています。
これまで、孤独とは無縁だと思っていた人も、パンデミックにより半ば強制的に孤独な状態に置かれ、さみしさを感じることが長く続くと、これまで述べてきたような、さみしさによるネガティブ感情のスパイラルに陥ってしまったのでしょう。
人間は、ひとりでいると、ネガティブフィードバックをしはじめてしまうものです。自分の行動を自分で振り返って、褒めたたえるよりもむしろ、厳しくチェックし、ダメ出しをしていくほうが、「安全」だということを学習させられてきたからです。
考えてもみてください。自分の行動を褒めたたえてばかりでまったく自身の行動を律することができない人がいたとしたら。
その人は、「イタイ」人とみなされてしまい、なおかつ、迷惑な人として集団から排除されてしまう可能性が高くなってしまうことは否めないでしょう。