ベテランとは直接会話する

とはいうても、おれもまた、何事も自分のペースで考えがちやったとは思うよ。「そんなんいちいち言わなあかんのか」といつも思うてた。今は違う。「いちいち言わなあかんのよ。特に若い子はなあ」と考え方を改めた。

「なぜそうするのか」を伝えないと、今の子は動かない。以前なら問答無用に、やれと言われたことをやれで通せたけどなあ。今はまず理論的に納得させて、そのための方法論、目的、目指す結果まで伝えてやらんと動かんわ。だからキャンプから、意識して選手と話したときもあるよ。

選手との会話を心掛けたというより、自然にそうなった感じよな。伝え方は選手によって変えたよ。投手陣では実績のある青柳や、ベテランの西勇とは直接会話することがあったなあ。

「今ドキの子」たちを伸ばす岡田流会話術…ベテラン青柳、西勇とは直接会話、おぼっちゃまルーキー森下はマスコミを活用、やんちゃな佐藤輝にはコーチから_2
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このクラスの選手は自分の考え方をしっかり持っている。一方的に指示するんではなく、こんなやり方もあるぞと打者目線で示したほうが伝わりやすい。グラウンドで話し込んだり、ときには監督室に呼んだ。

選手側からも近寄って来た。開幕投手で起用したが、シーズン中調子の出なかった青柳には日本シリーズ第7戦、最後の大舞台で先発させた。「最初と最後はお前に任せる」と青柳には伝えた。「思い切った起用」といわれたけど、そら秘密兵器やん。オリックスには日本シリーズで初登板やん。変則のタイプやし、おれにはいけるという感触があった。

6戦目青柳、7戦目村上でもよかったんやけど。ブレイクして1年目の村上にそこまでプレッシャーはかけられない。プレッシャーかけるんやったら青柳に、もうお前が責任取れ、とそういう覚悟よな。開幕投手の青柳には、エースとしてのプライドがあるし、信頼に応えてマウンドで答えを出したわなあ。それが普通のことよ。