政倫審で岸田首相が表情を変えた瞬間
「自民党の派閥の政治資金問題をめぐり、国民のみなさまに大きな疑念を招き、そして政治不信を引き起こしていることに対して、自民党総裁として心からお詫び申し上げる」
岸田首相は冒頭、謝罪の言葉を連ねた。幕末の志士、吉田松陰が遺したとされる、「志を継ぐ者がいれば、まいた種は絶えない」という意味を示す、「後来の種子、いまだ絶えず」との言葉も引用して政治不信の払拭に向ける意欲を示した。
テレビカメラによる中継も入る「マスコミフルオープン」の形式で行われた政倫審で 、反省姿勢をアピールした格好だが、肝心の答弁の中身はスカスカだった。これまでの国会での答弁を超える踏み込んだ発言はなく、野党が狙った「新事実」が明らかになることもなかった。
記者団から感想を問われた立憲民主党の泉健太代表が、「岸田総理の出席は無意味だった」と酷評するなど、国民の怒りを鎮めるにはほど遠い内容となった。
政倫審では、当選同期でもある立憲民主党の野田佳彦元首相から厳しく追及を受けた岸田首相だったが、様相が一変したのは、「宰相」としての資質を問われたときだった。
野田氏は、首相が「安倍派五人衆」ら野党から政倫審への出席を求められていた議員に出席を命じることなく、自らが政倫審に出席したことに「強烈な違和感を覚える」とバッサリ。「後手に回って的外れな対応をしなければいけない事態になった。総理の指導力の問題だ」と厳しく指摘した。
この指摘にむっとしたような表情を浮かべた岸田首相は、すかさず挙手し、次のように反論した。
「政倫審の規則の中で、本人の意思を尊重するとある。出席、形式についても本人の意思を尊重すると明記されている。私はそのことを申し上げ続けてきた」
そして、さらに語気を強めてこう続けた。
「だから例えば、御党のルーツである政党の元党首も政倫審に招かれた際に出席しなかった。こういった歴史があった」