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「さん付け」は少し違和感。だけど…… 

2000年、盗撮による東京都迷惑防止条例違反での書類送検にはじまり、道路交通法違反や覚せい剤取締法違反容疑、大麻取締法違反などで3度の書類送検、5度の逮捕をされている田代まさし。

2005年、2011年、2020年の逮捕ではそれぞれ刑務所に収監されており、計8年ほどを塀の中で過ごしている。その経験から、刑務官との関わりも深いであろう田代に、件の「さん付け」問題について話を聞くため、筆者は東京駅構内の地下グルメ街にある甘味喫茶「みはし」東京駅一番街店へと赴いた。

「オレ、『みはし』のあんみつは芝浦工業大学工業高校に通ってたときから食べてるの。ここじゃなくて上野本店ね。両親は離婚してて、南浦和に住んでる父親に京浜東北線に乗って会いに行った帰りは必ず寄ってさ。青春の味なんです」

思い出のあんみつを食べる田代まさし(撮影/集英社オンライン)
思い出のあんみつを食べる田代まさし(撮影/集英社オンライン)
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と、おいしそうに白玉あんみつをほおばる田代。

あんみつのような甘い人生どころか、苦渋に満ちた後半生を歩んでいる田代は、受刑者への「さん付け」問題について、こう持論を呈す。

「さん付けは……少し違和感があるかもしれない。ある程度、刑務官にも威厳が大事だと思うしね。それよりも、受刑者のことを『お前』って呼ぶ刑務官があまりに多いから、名前で呼ぶことを徹底してほしいとは思ってたよ。それだけで、受刑者の刑務官への反発はだいぶなくなると思うんだよ」

今回、「さん付け」と同時に、これまで受刑者から刑務官を呼ぶ際につかっていた「先生」という呼称も、上下関係を生みやすいとして廃止される。今後は「担当さん」や「職員さん」と呼ぶことになっているが、話がこの件に及ぶと、田代はやや複雑な表情となった。