ムダな服は持たない、遊びにも行かない、限りある時間を大切に

atmosを一代で築き、大きな成功を収めて多大な資産を持つはずの本明氏だが、服は2着しか所持していないという。

「歳のせいもあって重たい服は着れないので、冬はノースフェイスのウインドブレーカーに、ウール素材のインナーを着ています」

これが定番スタイルで、靴下も2足しか持っていないとか。また、遊びにもほとんど興味がないと本明氏。

「仕事が遊びのような感じですよね。人と飲みにも行かないですし。1日のルーティンは早朝に起きて1時間ほど散歩した後に新聞を読みます。その後、午前中に打ち合わせや仕事を数本こなしてからジムへ行って汗を流し、帰宅後はご飯食べて、本を読むことが多いかな。

本当は人と会って、いろんな知識を教えてもらいたいけど、一日に何十人も会えないじゃないですか。だからまずは本から知識を得て、後で人から教えてもらうようにしているんです」

スニーカーの王様がおにぎり屋に転身して1年…富を得ても所持する服は2着の本明秀文さんが「商売」のヒントを得る場所とは_4

本明氏は、今のライフスタイルを45歳から約10年続けている。そのきっかけになったのが「母親の死」だという。肉親の死を目の当たりにしたときに、はっきりと輪郭をもった死生観が芽生え、「時間は有限」という感覚を大事にするようになった。

「昨年には親父も死んで、本当に人の一生は儚いというか。一日一日を大切に、遊んでいる場合じゃないと、余計に思うようになりましたね」

最後に本明氏が見据える今後の展望を聞いた。スニーカー屋からおにぎり屋に転身してから1年。目標は「ニューヨークへの出店」と「国内での地方展開」だと抱負を述べる。

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「25年前にアメリカンレストランへ入ると、当時はバケットが出てきましたが、今はクロワッサンが主流です。つまり、先進国を中心に人口全体で歳をとってきて、柔らかくて体にやさしい食べものが求められているんです。海外で、日本のかつおだしや味噌、発酵食品といった日本食が注目されているのは、そうした流れがあるからなんです。

そのなかで、“おにぎりといえば〇〇”というブランドは海外にも日本にもまだありません。『おにぎり まんま』はそこを狙っていきたい。幸いにも、『おにぎり ぼんご』の店主である(右近)由美子さん直伝のレシピがあるので、海外では単価を上げて販売することも可能ですし、日本の地方では、その土地の豪族と組んでうまい形で出店を検討していきたいと考えています」

取材・文/古田島大介 撮影/集英社オンライン編集部