駅までのバス代は往復600円
成東駅までの乗車運賃は300円であった(2022年6月時点。現在は320円)。この撮影は妻も同行していたので、成東駅までの交通費だけで片道600円掛かった計算になる。ところが成東駅の周辺のコインパーキングは、駅から最も近いもので1日400円、少し離れた駐車場(それでも徒歩5分程度)であれば1日200円で停めることができてしまう。
これではバスより、駅前の駐車場を利用した方がずっと安上がりだ。
もちろん、単に通勤で駅へ行くためだけの用途で自家用車を1台確保するのでは、バス運賃よりもずっと高額な維持費が掛かってしまうが、単に駅の利用時だけでなく、地域で生活するために、成人であれば自分専用の車を1台は保有しているのが当たり前のこの地域では、すでに車が手元にある以上はバスより駐車場を利用した方が安上がりで、なおかつ時刻表に拘束されることもないので時間の節約にもなる(住民の感覚としてはむしろこちらの方が重要)。
これでは路線バスの利用が低迷してしまうのも無理もない話だ。
バスが成東駅へ到着したのは6時43分。千葉行の各駅停車が6時59分発(2022年6月当時)なので多少の時間的余裕はある。実はその1分後に、JR東金線・京葉線回りの成東発の便もあるのだが、とにかく目標は最速で新宿駅に到着することなので、あえて混雑することを承知の上で総武本線に乗り、佐倉駅で快速に乗り換えることにした。
成東駅は、混雑しているというほどではなかったが、通学中の高校生が大勢ホームで待機しており、入線した千葉方面への電車もすでに満席で、着席することはできなかった。着席したければ次便の始発電車を利用した方がずっと良い。
千葉県・佐倉駅到着までにすでに約1時間経過
佐倉での乗り換え時刻は7時25分。つまり佐倉駅での乗り換えの時点で、すでに出発地点のバス停からは約1時間が経過していることになる。この先、佐倉から新宿まで40分で到着できるはずがなく、この時点で検証は終了しているに等しいのだが、先にも述べたように、別に真面目に検証しているわけではなかったので撮影は継続して行った。次は錦糸町駅で再び各駅へ乗り換えることになる。
乗客の数は、千葉駅を過ぎたあたりから目に見えて増加していく。当然のことながら乗換駅の佐倉駅でも座席は確保することができず、成東駅からずっと立ちっぱなしである。
だが、こんなことは首都圏の通勤電車ではごく当たり前の光景であって、むしろ撮影時点は新型コロナウイルスに伴う行動制限の最中でもあり、コロナ前よりも電車が空いていると言われていた時期である。
乗客を車内に押し込むためのアルバイトまで雇われていたような、昭和の「通勤地獄」の時代とは比較にならない。総武線の新小岩駅近くに住む知人が語るには、コロナ前の通勤ラッシュの時間帯は、ホーム上の列に並んで3本ほど電車を見送らなければ乗り込むこともできなかったそうだ。それでもやはり車内は身動きが取れる状態ではない。
錦糸町駅への到着は8時15分だが、ここでの乗り換えが最難関である。ただこれも、コロナ前は下車するのも困難なほど混雑していたことを思えば、撮影時はずいぶん空いていたように思う。
それでも乗り換え時はホームの足元が見えないほどの人だかりで、首都圏のこうした鉄道事情を見慣れていなかった視聴者さんの驚きのコメントが多く書き込まれていた。佐倉から来た総武線の快速はそのまま東京・品川方面に向かってしまうので、ここで総武線の各駅に乗り換え、両国・御茶ノ水方面に向かわなくてはならない。
これはのちに鉄道ファンの方からのコメントで知ったのだが、1970年当時の総武本線には、銚子〜新宿間に「犬吠」という急行列車が運行しており、件の広告表記の「100分」とはその急行での所要時間ではないかとのことであった。
現在の不動産広告でも、駅までの所要時間や駅構内の移動時間などは考慮せず、駅間の所要時間のみを記載しているものは珍しくないので、それほど誇大表記というわけではないのかもしれない。