「志尊淳に演じてほしい」と求められる俳優に
――最終的に決断をするのは志尊さん自身ということですが、出演のオファーを受けるときの決め手はあるのでしょうか?
ケースバイケースですが、脚本がよければいいというものではないし、いろいろな要素がすべて揃ったら……という感じでしょうか。
ただ僕は作品の規模は特に気にしていません。エンターテインメントの大作じゃなくてもいい。そういうのもやりがいがありますが、インディペンデント系の小さな作品でも喜んで出演します。
でも、意外と依頼されるときの熱量も決め手になるかもしれません。これだけ多くの俳優がいる中、僕じゃなくても成立するはずなのに「どうしても志尊淳に演じてもらいたい」と言われると結構弱い(笑)。
やはり俳優は求められてこそクリエイティブな活動ができるわけですし、ストレートに「志尊淳しかいない!」と言われたらうれしいですから。そういうオファーが来る俳優にならなければと思っています。
どうなるかわからない将来を楽しみたい
――俳優として将来はこうありたいという願望はありますか?
ないですね。俳優になってから10年くらいは目標を定めて、貪欲に仕事に取り組んでいたのですが、無理をしすぎたのか心身ともにしんどくなってきて……。
そもそも作品を通して何かを伝えたい気持ちや、応援してくれる人に喜んでもらいたい気持ちでやっているから、理想を追い求めたりするのは違うのではないかと思うようになりました。
――客観的に考えるようになったんですね。
俳優の仕事をやってきて思うのは、背伸びはするべきじゃないと。等身大で表現することが大切だと思うようになりました。
だから、やりたい役というのもないです。映画やドラマのクリエイターの方々が「志尊淳にこれを演じさせたらいいんじゃないか」と提案してくれるものを演じた方が面白いものになると思います。どんな役の依頼が来るかと楽しみに待つのもいいかなと。
13年前に今の自分を想像できるか?と言ったらまったく想像できないじゃないですか。だからこれから先もいい意味で想像できない、どうなるかわからないことを楽しみながらやっていきたいです。
映画『52ヘルツのクジラたち』
3月1日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
配給:ギャガ
亡き祖母の一軒家に暮らす三島貴瑚(杉咲花)は、言葉を発しない少年(桑名桃李)と出会う。母親(西野七瀬)に育児放棄されていた彼を受け入れる貴湖。彼女はかつて自分が母親(真飛聖)にされていたことを思い出します。3年前、義理の父の介護を懸命にやっていた彼女ですが、病状の悪化を母に激しく責められ、絶望。貴瑚はトラックの前に身を投げようとしていました。そのとき助けてくれたのは、塾講師の岡田安吾(志尊淳)と学生時代の友人・牧岡美晴(小野花梨)。二人に手を差し伸べられた貴瑚は、家を出て、人生の再スタートを切るのですが……。
公式サイト:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/
(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会
取材・文/斎藤 香 撮影/恵原祐二 ヘア&メイク/大木利保(株式会社B.O.N) スタイリスト/九