スーパーマーケットは顧客第一主義の時代に

関東圏の郊外型スーパーマーケットも明暗が分かれている。

埼玉県川越市に本社がある「ヤオコー」は、34期連続の増収増益を達成している。2024年3月期も6%程度の増収、同0.3%増と今期もかろうじて営業増益となる予想だ。営業利益率は長らく4%台で安定している。成長、健全性ともに関東圏のスーパーマーケットの中ではトップクラスだ。

埼玉県鶴ヶ島市に本社があるベルクも好調だ。こちらは31期連続の増収である。「ベルク」の営業利益率もヤオコーと同水準で推移している。

冴えないのが、東京都立川市に本社がある「いなげや」だ。今年11月にイオンの連結子会社となる予定のスーパーマーケットである。

※各社決算短信より筆者作成
※各社決算短信より筆者作成
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一定のエリアに集中的に出店するドミナント戦略を主軸とし、郊外型のロードサイド店を展開するという基本戦略においては、いずれの3社ともに似通っている。

違いは顧客との向き合い方だ。

ヤオコーの売場はメリハリが効いている。「北海道フェア」や「豊洲まつり」など、こだわり派の顧客に向けたコーナーもあれば、「厳選100品」と銘打って徹底的に値下げを行う企画も設けている。消費者がわざわざヤオコーに足を運ぶ理由を作っているのだ。ベルクは、直輸入商品の拡大・強化に努めて商品力を高めた。また、値上げ局面において「相対的な安さ」を訴求して“お得感”を醸成している。

郊外型スーパーは、生鮮食品を取り扱い始めたドラッグストアが強力なライバルになりつつある。品揃えと価格による差別化は、これまで以上に激しくなった。今の時代に対応する企画力、商品力、訴求力が必要になる。

いなげやも子会社サンフードジャパンと商品の共同開発を行っている。しかし、総菜のキット化による味の均一化、省力化を図るなど、顧客よりも効率化に目が向いた取り組みが多い印象を受ける。

スーパーマーケットはチェーン展開による経営効率に目が向いていたが、今や顧客や地域特性にあった店舗展開を行うという、ある意味“原点回帰”をしていると考えて間違いないだろう。

取材・文/不破聡