なぜ国民がわざわざ開示請求をしなければならないのか

情報公開法は国民にとって大いに役立っているが、それでも完璧なツールであるとはいえない。開示請求に関して、すべての公的機関を統括的に監督している部門がないため、各機関での職員の対応にはばらつきがある。また、開示請求が棄却された場合に、請求者が苦情を申し立てる先もない(裁判に持ち込むという最終手段はあるが)。

「ボールペンの芯」およそ13万円分を経費に計上……「情報公開法」が暴いた、イギリス元首相のケチすぎる行動_4
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また、開示請求に応じるうえでどれくらい詳細な情報を出すべきかについては、提供する側の判断に委ねられている。そのため、開示されたものが、すでに公表されている一般的な統計データのたいした足しにならない場合もよくある。さらに、情報公開法に基づいた開示請求に適切に対応するには、多大な労力が必要だったり費用がかかったりすることも多い。

国会議員たちの経費申請の詳細を世間の目にさらされまいとする長い戦いに敗れた下院は、この点を痛感させられた。そうして、議員たちの経費申請やその支払いをすべてたどれるような仕組みを、新たに構築しなければならなかった。それはすなわち、透明性の向上を訴える運動家たちにとっての勝利を意味していた。

政府が保持しているデータを公にするために、なぜ国民がわざわざ開示請求をしなければならないのかという議論もある。情報公開法に基づいた開示請求に応じてデータを快く公表できるのであれば、初めから公表しておけばいいのではないだろうか。

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ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙されるのか
著者:ジョージナ・スタージ
訳者:尼丁 千津子
「ボールペンの芯」およそ13万円分を経費に計上……「情報公開法」が暴いた、イギリス元首相のケチすぎる行動_5
2024年1月26日
2,640円
四六判/368ページ
ISBN:978-4-08-737003-4
【絶賛!】
政策はAI(人工知能)では作れないことを、徹底的にわからせてくれる。
――藻谷浩介氏(『里山資本主義』)

その数字は、つくり笑いかもしれないし、ウソ泣きかもしれない。
データの表面を信じてはいけない。その隠された素顔を知るための一冊!
――泉房穂氏(前・兵庫県明石市長)

【データの“罠”が国家戦略を迷走させる!? ビッグデータ時代の必読書!】

「データ」や「エビデンス」に基づいてさえいれば、その政策や意思決定は正しく、信用できると言えるのか?

私たちは政府統計を信頼しきっているが、その調査の過程やデータが生み出されるまでの裏側を覗けば、あまりにも人間臭いドタバタ劇が繰り広げられていて驚くはずだ。本書は英国国家統計局にも関わり、政府統計の世界を知りつくす著者が、ユーモア溢れる筆致でその舞台裏を紹介した一冊である。

扱われるのは、英国の移民政策、人口、教育、犯罪数、失業者数から飲酒量まで、実に多彩な事例。それぞれの分野で「ヤバい統計」が混乱をもたらした一部始終が解説される。いずれも、日本でも同じことが起こっているのではないかと思うような話ばかりだ。

現在、この国では「根拠(エビデンス)に基づいた政策決定(EBPM)」が流行り言葉のようになっている。人工知能の発達も急速に進みつつあり、アルゴリズムに意思決定や判断を任せようとの動きも見られる。「無意識データ民主主義」といった言葉も脚光を浴びつつある。しかし本書を読めば、数字やデータだけを頼りに物事を決めることの危うさが理解できるはずだ。

数学や統計学の予備知識はいっさい不要。楽しみながらデータリテラシーが身に着く、いま注目の集英社シリーズ・コモン第3弾!

【目次】
第一章 人々
第二章 質問する
第三章 概念
第四章 変化
第五章 データなし
第六章 モデル
第七章 不確かさ
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