種と肥料の輸入が止まると、国産の大根や長ナスは食べられなくなる…
収穫量が落ちつつある葉物野菜だが、いまや野菜全般で同じような状況が起こっているという。
農林水産省が一昨年に公表した「作物統計調査」の主要野菜計(全国)収穫量累年統計データによると、昭和48年(1973年)に1480万6000tあった収穫量は、令和4年(2022年)には1284万2000tに。約50年でおよそ200万tも減少している。このままの状況が続けば、2035年時点で1973年時の半分の収穫量になってしまう可能性もあるそうだ。
「さまざまな品目の収穫量が減少している理由は、葉物野菜と同じく気候変動による影響ももちろんですが、それ以上に深刻な人材不足と農業従事者の高齢化にあります。
農業は十分な所得が得られないことによる離職者の増加が著しいのです。不安定な収入では、これからの農業を担う世代が育ちにくくなるのは当然でしょう。
そして日本の農家の平均年齢は現在68.4歳であり、10年後には約80歳になることが予想されています。高齢化が進む産業でどれだけの生産ができるか、どれだけの農家、農村が存続できるのか……より厳しい状況になっていくというのは想像に難くないでしょう」
さらに鈴木教授は種や肥料を輸入に頼り切っている日本の農業の現状にも警鐘を鳴らす。
「野菜の種は約9割を海外から輸入に頼っており、三浦大根や九条ねぎ、京みず菜、長ナスなど、日本の伝統的な野菜の種でさえ輸入の割合が高い。さらに肥料となると、ほぼすべてを輸入に頼っています。
現在、日本の野菜全体の自給率は80%ですが、仮に種が輸入できなくなるとしたら自給率は8%にまで大幅に減少してしまう。そのうえで肥料まで輸入が止まってしまうと、さらに半分の4%にまで下がってしまうんです」
国際情勢の変化により種と肥料の輸入がストップすることで、日本の農業が壊滅的な打撃を受けるという最悪のシナリオも考えられなくはない。
「コロナショックで物流が止まった際に種の供給も止まりかけたこともあり、さらにはロシアによるウクライナ侵攻により、世界的に肥料の需給逼迫への危機感が一層高まりました。
そして昨年12月、農業大国の中国は自国内での需要が高まったこともあり、化学肥料の原料として使われる尿素とリン酸アンモニウムの輸出規制を強化。日本は肥料の多くを中国からの輸入に依存しているので、今後輸入が滞ってしまうと、野菜の収穫量が半分に減少してしまうほど打撃を受けることになってしまいます」
種や肥料などの輸入が止まってしまうと、生産の基盤となる種や肥料を国外に頼る構造により農家が廃業に追い込まれ、国産農作物の減少が加速しているともいえるのだ。