東京都選挙管理委員会の見解は…

各町会が実利を選ぶ「大人の判断」に傾くことは何ら批判されることではない。また、いつ来てもおかしくない災害に対する備えは必要なことだろう。しかし、現職知事が選挙直前に自身の顔写真を貼ることを助成金交付の条件にしたことを、東京都選挙管理委員会はどう判断するのだろうか?

「これに関しては本当に千差万別でして、個々のケースで判断されるので一概には申し上げられないんですよ。もちろん選挙活動であれば、任期満了日前の6ヵ月間は選挙区内に個人ポスターを掲示してはダメです。

しかし、街でよく見かける政治家と党首が2人並んで写っているようなポスターは個人ではなく政党の政治活動にあたるので、任期満了日前の6ヵ月間でも掲示できます。また行政において使用するチラシなどについては各局が目的をもって使用している場合、それがただちに公職選挙法に抵触するとはいえません」(東京都選挙管理委員会)

東京都庁
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取材に対する都選管の解答はいかにも玉虫色なものだったが、政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授はこう言い切る。

「該当のチラシが公職選挙法にただちに抵触したり、違反することなどはないにしても東京都の助成金ということは、公金を使っているということです。公金を使う以上、何のために小池都知事の写真入りのチラシを使用したか、そこに必然性があるのかの説明責任があります。

こうした助成金に対して、知事などの写真入りチラシなどを提示することが申請条件に含まれているというのは、これまで私は聞いたことがありません。今回のように町会や自治会の防災力強化を目的にした助成事業に知事の写真を使用すると政治色も出ますし、チラシに拒否反応を示す人もいると考えられます。

だからこそ、このチラシである必然性をきちんと説明できないのであれば、公金を私物化して自己のPRに使っていると言われても仕方ないのではないでしょうか」

東京都生活文化スポーツ局に質問状を送ると、広報課から以下の回答があった。

〈本助成事業は、関東大震災から100年の節目において、地域防災力の向上を目的として、町会・自治会に防災資機材等の購入を支援するものである。共助の要である町会・自治会が東京都と連携して行っている防災への取組を住民の方々に広く知ってもらう観点から、チラシの掲示をお願いしている。

防災は都民の生命安全にかかわる重要事項であり、都民の生活と命を守ることを一番に考え、都知事からのメッセージとともに都民にお届けしたものであり、過去にも同様の取り組みを行なっている。なお、都には指摘するような声は寄せられていない。

こうした取組は、都が行う防災力強化助成という事業の一環で作成・配布された文書であることから公職選挙法の規制の対象とならないことを確認している。本事業について、政治色と関係付けての報道は、悪戯に地域防災力の向上という行政運営を妨げる行為であると考えている〉


小池都知事も東京都も、助成金の条件に“都知事の顔”を貼らせることが地域防災力向上につながると本気で考えているのか。「過去にも同様の取り組みを行っている」とは半ば居直りではないのか。

都民にとって何がファーストなのか、納得のいく説明が必要だろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班