賃金改定率に見るマクドナルドとモスバーガーの比較

SNSでは、マクドナルドが高級品になったとの声が聞こえてくる。また、高級志向のモスバーガーと変わらなくなったとの声もある。それも当然だ。どちらも数字で説明できる。

厚生労働省が発表している「賃金引上げ等の実態に関する調査」に、1人当たりの平均賃金改定率と、マクドナルド、モスバーガーの客単価の推移したグラフがある。
2010年の水準を基準値の100として、各社の伸びを見ると、2023年の賃金は2010年と比較すると1.27倍の伸びに留まっている。しかし、マクドナルドは1.61倍、モスバーガーが1.41倍だ。

※賃金引上げ等の実態に関する調査と各社月次報告書より筆者作成
※賃金引上げ等の実態に関する調査と各社月次報告書より筆者作成

マクドナルドの客単価は、2019年まで賃金の伸びを下回って推移していた。ここまでは、安いという消費者意識が根付いていたことは間違いないだろう。しかし、2021年には1.3倍、2022年に1.5倍、2023年に1.6倍と短期間で急速に上がったため、その反動で余計に高く感じることとなる。

その一方でモスバーガーは、賃金上昇率に張り付くようにして客単価も上がっていった。そのため、値上げを実感しにくいのだ。

2019年を100として客数の推移を見ると、その後のマクドナルドはすべての年で基準値を下回っている。モスバーガーは2021年に100を割り込んだものの、それ以外は上回った。

※各社月次報告書より筆者作成
※各社月次報告書より筆者作成

値上げを実感しにくかったモスバーガーは客数減を抑え込むことができたが、マクドナルドはそうもいかなかった。最新の値上げで「ビッグマック」は480円になるが、「モスチーズバーガー」の480円と同じ価格となる。かつて2社の価格差が大きいことを実感していた世代は特に、モスバーガーの選好度が上がることも考えられるだろう。