政治家もヤクザも風見鶏だらけ

「組織図を見るなら、六代目山口組がわかりやすい」と話すのは関東で活動する暴力団の組長だ。

暴力団組織の基本は親分子分の関係からなる。六代目では組長の下には執行部としてナンバー2の「若頭」、「舎弟頭」に「本部長」、「若頭補佐」、それに「舎弟」に「幹部」、「若中」と続く。

親分から見て若中は「子分」、舎弟は「弟分」。若頭は子分の筆頭で時期組長候補、舎弟頭は兄弟分たちを束ねる代表、そして本部長は事務方というところだろう。

「組を継承するのは子分であり、その筆頭である若頭が有力候補。舎弟が組を継ぐことはほとんどない。だが、六代目山口組の若頭、高山清司氏もすでに76歳という高齢。このままいけば若頭補佐の中から次の組長が選ばれる可能性も否定できないが、誰になるかはわからない」(組長)

六代目山口組、高山清司若頭(写真/共同通信社)
六代目山口組、高山清司若頭(写真/共同通信社)
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金を稼ぎ、実力のある子分ほど名を上げ出世していくと思われがちな暴力団組織だが、それだけではダメだとこの組長は言う。

「必要なのは実力、運、人を選ぶ目。どこの組に入るか、誰につくかで命運が決まる。抜擢されるには、誰につき、誰に好かれ、目をかけられているかにかかってくる。暴力団はえこひいきが幅を利かせる世界。“一にも二にもえこひいき”という組長がいるほどだ。好きなヤツはそばに置いて重用するが、好きでもないヤツにはぞんざいになる。

つく人間を間違えると出世どころか自分の命が危なくなる。上の者も人選を間違うと妬まれ恨まれ足を引っ張られ、自分の身すら危うくなる。暴力団組織は政治家のように簡単に離党や離脱ができず、復権するのも困難だ。子分らが風見鶏になっていくのはしかたない。まぁ、政治家もえこひいきと風見鶏だらけなのは同じだが」

政治家もヤクザも、権力を争う世界の本質は、どこも似たようなものなのかもしれない。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班