住吉会の組織図は党の派閥に近い

今の六代目山口組に最高顧問はいないが、司忍組長が代替わりしたころは顧問や最高顧問がおり、その座には三代目山口組の田岡一雄組長、四代目山口組の竹中正久組長についていた直参組長だった実力者たちが就いていた。

「最高顧問や顧問は大御所扱いで御意見番的存在だが、役職に就いてもほとんど意見を言わず口を挟むこともない。そのような実力者たちに正面きって引退してくださいとは言えず、名誉職に就いてもらったというのが本音だろう。六代目山口組では昨年、直参の2つの組で代替わりがあっていずれも前組長は引退せず総裁というポジションに就いたが、これも名誉職であって、組の正真正銘のトップは跡目を継いだ組長だ」(古参幹部)

政治刷新本部の名簿では、本部長となった現首相の岸田文雄氏の上位に、最高顧問として麻生、菅という首相経験者2人の名前がある。

「政治の世界では岸田氏より、麻生氏と菅氏のほうが序列は上。彼らは権力を手放さず、現首相に意見を言えるほど影響力がある」(古参幹部)。

麻生太郎自民党副総裁(自民党ホームページより)
麻生太郎自民党副総裁(自民党ホームページより)
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暴力団組織ではトップに面と向かって逆らうならば、山口組が分裂したように組を割って出ていくしかない。だが政治の世界には、同じ党内なのに平気でトップに逆らい、派閥の論理を利用して対立も辞さないのが実情だ。

「党の中で、首相である岸田氏の言うことを“聞かない派”があるのは、自民党が派閥の連合体みたいなものだからだろう」

古参幹部にそう言われて思い浮かべるのは指定暴力団の住吉会だ。住吉会はかつて住吉連合、住吉連合会という名称で知られた連合組織だ。

「住吉は『連合』と称していたように、一般的な暴力団がピラミッド型組織であるのと違い、傘下が横並びの組織。そのためか役職がやたらと多い」(古参幹部)。

全国に約2400人の構成員を持つ住吉会は、会長の下に最高幹部の会長代行や理事長幹事長、本部長、総務長、執行部に9つの委員会の委員長がいる。さらに会長室室長や事務局長、十数名の委員長補佐に各地区の統括長などの他、特別常任相談役や数十名の常任相談役、会長補佐約20名、副会長は80名を超える。

「令和4年に40名あまりの副会長昇格者が公表されたときはどこかの合格発表みたいだった。長年ヤクザをやっている俺たちでも住吉はわかりにくい。暴力団の中では一番、住吉が党の派閥に近いだろう」(古参幹部)