「日本でMMTをやってもいいことは起きない」信奉者たちが目を逸らす「アメリカではすでに失敗している」事実
賃金は上がらないのに物価高が止まらない。経済学者の野口悠紀雄氏いわく、日本の円安・物価高は世界的な情勢の影響を受けているからだという。だがそれに対しての有効な策を日本政府が打てていないことも事実だという。氏の最新著である『どうすれば日本経済は復活できるのか?』より現代貨幣理論を交えて日本の深刻な現状をレポートする。
どうすれば日本経済は復活できるのか? #3
日本でMMTをやってよいことにはならない
日本でホームメイド・インフレが起きなかったからといって、MMTをやっていいということにはならない。
大量の国債発行を可能にするために、日本では、長期国債を大量に購入し続けているだけでなく、長期金利を人為的に抑えている。その結果、アメリカの金利引き上げによって、日米の金利差が著しく拡大した。このため、アメリカのインフレが日本に輸入されることになったのである。この意味において、国債の大量発行がインフレの原因になっていると考えることができる。
金利抑制策の悪影響は、それだけではない。長期金利は、経済の最も重要な価格の一つだ。これが抑圧されているために、金利が経済の実態を表さなくなり、その結果、資源配分が著しく歪められている。
財政規律がなくなってしまったのが、最大の問題だ。その結果、効果の疑わしい(その反面、公平性の観点から大きな問題を含む)人気取り補助策が、次々と行われている。
国債発行を増やすという悪循環が生じている。それだけではなく、経済全体の資源配分が歪められている。これは日本経済の長期的なパフォーマンスを劣化させることになるだろう。
政府次第で、日本はまだ復活できる
韓国には平均給料で負けているという明確な事実
写真/shutterstock
どうすれば日本経済は復活できるのか(SB新書)
野口悠紀雄
2023/11/7
990円
296ページ
ISBN:978-4815610104
日本経済はデジタル化で復活させるしかない!
日本経済が危ない。
物価高騰は止まらないのに、賃金は上がらない。超高齢社会で労働力の低下は止まらない。1人当たりGDPがG7トップから最下位へ転落。etc.
日本はこのままで大丈夫なのか。危機的な状況にある日本経済への処方箋を提言する
デジタル化が日本経済を再生させる~付加価値と生産性で見る日本経済論
第1章 G7のトップから最下位へ
第2章 なぜ日本経済は停滞したのか?
第3章 今後の日本経済はどうなる?
第4章 日本が直面するスタグフレーションの恐れ
第5章 金融政策の誤り
第6章 マイナンバーカード「迷走」曲
第7章 生成AIという大変化に対応できるか?