子どもからのSOSを見逃さない
ここまで読み進めてきた方のなかには、「うちの子は被害にあわないだろうか」と心配になる方もいるでしょう。前述のとおり、子どもは被害を被害と認識するまでに時間がかかります。
またグルーミングをされた場合、加害者から巧みに口止めをされたり、加害者に「嫌われたくない」と子どもが思っていたり、「自分が悪いのではないか」と罪悪感や自責感を抱いていることから、被害を言い出せずにいます。そのため、被害の実態を保護者や周囲の大人がすぐに気づくのは難しい場合も多いです。
ここでは、子どものどのような変化に親や周囲の大人たちは気を配っておけばよいか、子どもの生活面における兆候やサインについて述べていきます。
まだ子どもが被害に対して無自覚な段階では、スマホを閲覧する時間が長くなる、寝るまでパソコン操作をしている、オンラインゲームに耽溺している、家族と一緒にごはんを食べなくなる……など、日常のささいな違和感にまずは注意したいところです。
しかし、いくら心配だからといって、親が子どものスマホやパソコンの履歴をチェックするのは、子どもとの信頼関係を壊すおそれもあり、注意が必要です。思春期が近づくにつれて、子どもが性的な興味関心を抱くこと自体は性別問わず当たり前のことです。自分が子どもの頃を振り返っても、親から日記やノートを勝手に見られたら、反省よりも反発心や反抗心が先に立つのは、想像に難くないでしょう。
子どもの学年が上がれば上がるほど、親が「最近何かあったの?」「変わったことない?」と聞いても、子どもからは「別に」「さぁ」とはぐらかす答えしか返ってこないことも多々あると思います。しかし、子どもの異変やSOSをいち早く察知するためにも、日常での親子間のコミュニケーションを確保しておくことが前提です。
具体的には、普段から「オンライン上には子どもを巧妙に誘う悪意のある大人がいる」ということを子どもに話しておくのも良策です。SNSなら「見知らぬ人からのメッセージには返信しない」、オンラインゲームなら「知らない人からの有料アイテムやギフトは受け取らない」、さらに「いくら仲良くなってもひとりで直接会わない」など親子間でルールを決めておくことで、より具体的な防犯にもつながります。
また、「男の子が被害にあうことも少なくない」「ネットでは皆がターゲットになりうる」という点も親御さんの口から伝えられるとよいでしょう。
さらにグルーミングだけでなく、違法薬物や自殺、最近では詐欺や強盗の「闇バイト」などの違法行為を含めた有害な情報から子どもを守るためにも、スマホのフィルタリング機能は必須です。またご家庭によっては、閲覧時間の制限をかける、親の前以外ではスマホには触らないなど、物理的な制限をかけるのも有効です。