「クマ被害の本当の原因は人間」
また、クマの生態についてはこう言及する。
「誤解されている方も多いですが、クマはものすごく臆病な動物で、以前は人と遭遇しないように山奥で生活していました。よくクマは人間の食べ物を知ると味をしめて戻ってくるなんて言われていますけど、そんなことはありません。
日本熊森協会では、5歳まで野生で育ったクマを保護飼育していますが、冬ごもり前のこの時期は、目の前にリンゴや柿といった果物を置いてもどんぐりしか食べません。人間の勝手な思い込みはやめてほしいんです」
そう肩を落とす森山さんは、今、クマによる人身被害が最多ペースになっている理由をこう分析する。
「自然界は人間の頭では計り知れない世界である上、わからないことでいっぱいですが、今年のどんぐりの大凶作だけが原因ではありません。なぜなら今までもこうしたどんぐりの大凶作年はありました。
本当の原因は、戦後、クマたちの生息地であった広大な天然林がスギなどの人工林にされたり、道路やダムなどの開発で破壊されたりしたこと、近年の急激な温暖化によって、受粉してくれる昆虫が激減したことです。その結果、今年は山ぶどうなどの液果(えきか)まで大凶作になっています」
これら原因の中心にいるのが“人間”という存在だという。
「最近は、さらに輪をかけて、広大な森林を伐採してメガソーラーを設置したり、尾根筋に巨大風車を建てたりと、人間の都合で山をどんどん開発し、クマの食料の大飢饉を引き起こし、その結果、クマは過疎化した人里どころか市街地にまで餌を求めて降りてくるようになりました。
自然の森は密閉状態で初めて存続できるのに、勝手に“穴”を開けてしまったら乾燥してしまいます。ウチの団体は『祖先がしていたように、人間は水源の森である奥山から一歩下がれ』と主張しています。これ以上クマによる被害を増やさないためには、当面は当協会がしているように、家周辺のクマの餌になる物の除去や、クマが潜める藪の刈り払いなども必要です」
クマを中心に巻き起こる主張とバッシング。まさか自分たちが人間社会にこのような争いもたらしているとは、クマたちは夢にも思っていないだろう。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班