2023年度(1月~12月)に反響の大きかった記事をジャンル別でお届けする。今回は「クマ記事ベスト5」第5位の、10月の北海道でのヒグマ猟に密着したルポ記事だ。(初公開日:2023年11月4日。記事は公開日の状況。ご注意ください)
ベテラン猟師も驚く今年の熊の異常な多さ
私が猟銃と狩猟の免許を取得して15年が過ぎた。
ヒグマとの遭遇を願い、毎年欠かさず北海道の猟場へ通い、山梨県では有害駆除に従事しているのだが、未だに一度も熊に遭遇したことがない。これだけ熊が出没しているにも関わらず、片想いが成就しないのは世の常か、はたまた私の殺気が強すぎるのか。
10月21日は北海道の十勝地区におけるエゾシカ猟の解禁日。(ヒグマは10月1日解禁)
私は10年以上お世話になっている十勝在住のハンター仲間と一緒に猟場へと向かった。グループのリーダーで68歳の光雄さんは猟歴40年のベテランだ。毎年、冬眠前のヒグマを仕留めていて、つい先日も2頭のヒグマを獲っている。
今日の猟は光雄さんをリーダーに20〜50代のハンターたちで猟場へと向かう。光雄さんと私が向かったのはヒグマが多く生息する鹿追町で、つい3週間前に光雄さんが2頭のヒグマを獲ったのもこの山だ。早朝5時、鹿の繁殖期ということもあり、立派な角を持つ雄鹿を何度も見かける。ふだんならチャンスとばかりに撃つのだが、今日の狩りの目的はヒグマなので鹿を横目に先を進む。
「ここは十勝でも熊がたくさんいるよ。強い熊の縄張りから追い出された熊が山のふもとのほうに追い出されるんだ。今までは車で林道を走っていて熊に出会うことなんて滅多になかったのに、今年は1日で熊に2回も遭遇して2頭獲れた。そんなこと、これまでにありえなかった」
山に隣接している飼料用のデントコーンの畑には夏から秋にかけてヒグマが入り、作物を食い荒らすので困っているという農家の人の話を聞いたことがある。先日、光雄さんが仕留めたという場所を通りかかるが、ヒグマの姿はない。
牧草地に隣接する林道を車でゆっくり走っていると、地面の所々に黒い山盛りの糞が落ちていた。車を降りて確認しに行くとヒグマの足跡がある。糞の大きさからして親のヒグマだ。やはりこの一帯にはヒグマが潜んでいる。
「今年の夏は北海道でも記録的な暑さだったから、ドングリやコクワの木の実が不作だったのが影響してるみたいだな。強い熊が餌場を独占するから、餌にありつけなかった熊が人里に降りてくるんだよ」