準決勝進出のラストイヤーコンビは2組のみ
3時間超に及んだ準決勝は、ベストアマチュア賞のナユタが披露した「M-1グランプリ」を題材にしたネタで幕を切った。M-1グランプリの話題で笑いをとる…すなわち、同大会が国民的行事として認知されていることが前提となる漫才だ。M-1における漫才が競技化されているといわれて久しいが、準決勝すべてのネタを見て改めて2023年大会は競技性がいっそう研ぎ澄まされ、その到達点となる年であると確信した。
準決勝でネタを披露したコンビはいずれもスピード感にあふれ、よどみないボケとツッコミの応酬が印象的だった。それでいて既視感のあるネタはあまりない。各組が独自性を磨き、この大会を目標として“賭けてきた”時間の長さが感じられる。1組たりとも会場のボルテージを下げることはなく、タイムオーバーはおろか制限時間間近を知らせるアラームが鳴ることもなかった。
出場組の若返りも見られた。「結成15年以内」という出場資格が設けられているため当然ラストイヤーを迎える組もいるのだが、準決勝に残っていたラストイヤー組はヘンダーソンとななまがりの2組のみ。結成10年以内が19組と過半数以上を占め、ぎょうぶ、豪快キャプテン、令和ロマン、シシガシラ、くらげ、と結成5年以内の組の活躍も目立った。
むしろ緊張感があったのは客席のほうだ。M-1グランプリがお笑い芸人の人生を変えることが事実になった今だからこそ、期待とともに不安に似た雰囲気が漂っていた。約800人収容のNEW PIER HALL。舞台中央に屹立するサンパチマイクはどこか神聖で、会場内では写真を撮ろうと観客が長蛇の列を作り、開演直前までそれが途切れることはなかった。