11月16日、関係者への聞き取りが始まった
安田種雄さんは2006年4月10日未明、東京都文京区の自宅居間で首をナイフでひと突きにされた状態で見つかった。享年28歳。2001年に結婚したモデル仲間のX子さんとの間に一男一女をもうけていた。
種雄さんの死因は失血死だったが、体内から致死量の覚醒剤が検出されたことから、警視庁は覚醒剤の乱用による精神錯乱で自殺と断定。しかし12年後の2018年4月、ナイフへの血の付き方に不審点があるなどとして警視庁捜査一課は「コールドケース(未解決事件)」と判断、佐藤誠警部補(当時)が重要参考人である木原議員の妻・X子さんの取り調べにあたるなど再捜査に着手した。
しかし、「国会が始まると木原氏が子供の面倒を見られない」などの理由でX子さんへの聴取が10月下旬の臨時国会の開始直前にいったん打ち切られ、12月に閉会されてからも再開されることはなかった。
岸田文雄首相の最側近として権勢を振るっていた木原氏がこの“再捜査潰し”に暗躍していたと週刊文春が今年に入って次々と報道。これを受けた露木康浩警察庁長官が同7月13日に「法と証拠に基づき適正に捜査、調査が行われた結果、証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」と言及した。
このとき、警視庁を退職していた佐藤元警部補は同28日、文藝春秋社で行われた記者会見で「断言しますけど、事件性はありですからね」と明言した。これらの経緯については♯1と♯2に詳しい。
種雄さんの父や姉は今年10月に改めて警視庁大塚署に被疑者不詳の殺人事件として告訴状を提出、同25日に受理された。そして11月16日、関係者への聞き取りが始まったという。これらについて、種雄さんの長姉が語る。
「告訴状は10月18日に父と妹(種雄さんの次姉)が提出し、25日に正式受理の連絡をいただきました。再捜査のための聞き取りということならうれしいのですが、これまで何度も窓口担当の刑事さんに今後の流れや見込みについて質問しても、『私は取り次ぎなのでわかりません』としか答えてくれないんです。今度こそ、捜査を尽くして犯人を捕まえてほしいと思っているのですが」
過去2回の捜査が不完全燃焼に終わり、三度目の正直に賭ける想いが否が応にも伝わってくる。
「前回の捜査が中途半端にうやむやに終わって、長官は『事件性はない』と明言されました。でも、私は警察署に何度か説明を聞きに行って、担当者の方に『送致をなぜしなかったんですか』と質問をしたんです。『捜査は全部尽くしました』とおっしゃるからそう質問したのに、返ってきた答えは『なんででしょうね』でした。
理由は教えてくれませんでしたが、その方は『事件というのは、(検察に)送致をして初めてそこで終了になるので、厳密にはこの事件は終わっていません』とも言われました。なので、そういう状態に放置せず、本当にきっちりと捜査をして結果を出し、送致してほしいと思います」