「できるだけ」自転車を利用するだけでも確実なメタボ改善効果が。糖をたくさん消費して血糖値を下げる自転車運動のメカニズム
通勤・通学・買い物を「自転車」にかえるだけ、ママチャリや電動アシスト付き自転車でも体は変わると、自転車が体へ与える有用性が注目されている。『自転車に乗る前に読む本』から、なぜ短時間の利用でも効果が出るのかを、一部抜粋・再構成して解説する。
自転車に乗る前に読む本 #3
3ヵ月の自転車運動で
メタボが改善した!
冒頭で紹介した自転車通勤を続けている被験者10名の、メタボリック・シンドロームに関わる血糖値やコレステロール値は正常の範囲内でした(図1-3)。しかし、自転車通勤を始める前から、正常値だった人もいたかもしれません。
自転車の健康づくり効果を確かめるには、自転車運動をする前後でメタボリック・シンドロームに関わる数値がどう変わるのか比較する必要があるでしょう。
株式会社シマノでは、平均年齢が約44歳の男性6名を被験者に実験を行いました。彼らはふだん自転車に乗る習慣はなく、3名はメタボリック・シンドローム、ほかの3名も腹囲が85センチメートル以上のメタボリック・シンドローム予備軍でした。
彼らに3ヵ月間、できるだけ自転車を利用するように依頼しました。ただし走行時間や頻度、運動強度の指示は行いませんでした。
6名は平均で週3回、1日合計約50分、走行時間のほとんどが50〜85%の運動強度で自転車運動を行いました。米国スポーツ医学会が推奨する基準を達成する運動です。
すると3ヵ月の自転車運動により、6名平均で中性脂肪と悪玉のLDLコレステロールが大幅に減少する効果が見られました。また、体重や体脂肪率も減少傾向を示しました。
とくに運動強度を指示しなくても、自転車運動は健康づくりに必要な強度を達成して、3ヵ月という短期間でもメタボリック・シンドロームの改善効果が見られたのです。
図/書籍より
写真/shutterstock
「疲れを感じにくいのに運動強度が高い」自転車という万能な運動器具
健康ウォーキングにメタボ予防効果はあまりない
自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」 (ブルーバックス)
髙石 鉄雄 (著)
2023年10月19日
1100円
192ページ
ISBN:978-4065337110
キーワードは”疲れない”! 通勤・通学・買い物を「自転車」にかえるだけでいいんです! もちろん軽快車(ママチャリ)や電動アシスト付き自転車でも、体は変わります!
中年期から始まる筋力低下。そしてメタボリックシンドロームに起因する「糖尿病」「肥満」「循環器系のトラブル」……。体質を改善しながら、筋力を鍛えるための最高のアイテム「自転車」。
その乗り方のコツや体への影響を、運動生理学の専門家が、さまざまなデータとともにより運動効果を高めるための自転車の乗り方のコツ、そして体質を改善するための自転車活用の目安をレクチャーします。
ウォーキングやランニング、筋トレなど、さまざまな健康法が提唱されています。そのなかにあって、なぜ「自転車」なのか?
そのヒミツは、自転車の構造と体の使い方、そして道路事情にあります。
★信号待ちでとまる:無意識のうちに運動に緩急をつける「インターバルトレーニング」が行えています。
★交差点でとまる:交差点は中央部が高くなっています。そのためスタートで自然に脚に負荷がかかります。
★ツラくないから続く:被験者のフィードバックでは、ジムなどのエアロバイクよりも、野外を走る自転車は、同じ運動量であっても爽快感を感じており、運動を長く持続できます。
自転車に乗るまえに、必読の書です!