こうして続いていく、僕のデュアルライフ

とはいえ、これらのクマ対策、現時点ではほとんど不要です。

12月上旬である現在、標高1000メートルに位置する寒冷地の山中湖村は、いよいよ冬本番という雰囲気。
もうすでにツキノワグマは、冬ごもりに入ったはずなのです。
対策グッズは、子連れグマになってより危険性が増す、来春までは温存しておこうと思います。

間もなく、山中湖村へ行く道も、峠のカーブなどを中心に朝晩は凍結することが多くなります。
車のタイヤをスタッドレスに履き替えなければならないので、僕はある平日の夜、一人で山の家に向かいました。
交換用のタイヤは、山の家の倉庫に置いてあるのです。

夜更けに到着した山の家の中はかなり冷えていました。
でも、今年の初めに新しく設置した薪ストーブは、家の中を柔らかな暖かさで満たしてくれて、快適に眠ることができました。

「クマに襲われる」が自分ごとになった“山の家暮らし”のライターが、準備万端で揃えたクマ対策グッズ全容とは_4
薪ストーブ最高

翌朝早く。
条件が揃えば日の出の時刻に出現する、朝日の光が雪の積もった富士山の白い斜面を紅色に染める現象“紅富士”を見るため、キンキンに冷えた空気の中、外に出ました。
もしかしたら冬ごもりしそびれたクマが出るかもしれないので、ラジオ、ホイッスル、おもちゃのピストルの3点セットは、もちろん携行しています。

あいにくその日は雲が多く、紅富士は見られませんでしたが、朝日と交代して徐々に輝きを失いつつある朝の満月の前で、かっこよくポーズをとるカラスの写真を撮ることができました。

「クマに襲われる」が自分ごとになった“山の家暮らし”のライターが、準備万端で揃えたクマ対策グッズ全容とは_5
紅富士は見られず残念
「クマに襲われる」が自分ごとになった“山の家暮らし”のライターが、準備万端で揃えたクマ対策グッズ全容とは_6
月に烏

こんなふうに、僕のデュアルライフは続いています。

必ず11月中にしなければならないタイヤ交換
必ず11月中にしなければならないタイヤ交換
すべての画像を見る

写真・文/佐藤誠二朗

『山の家のスローバラード 東京⇔山中湖行ったり来たりのデュアルライフ』
佐藤誠二朗 (著)
「クマに襲われる」が自分ごとになった“山の家暮らし”のライターが、準備万端で揃えたクマ対策グッズ全容とは_8
2023年11月15日発売
2200円(税込)
264ページ
ISBN:978-4991203923
東京で生まれ育ち、働き、家族をつくってきた筆者は、なぜデュアルライフ(二拠点生活)を始めたのか。東京と山中湖を行き来しながら暮らす日々を軽快に綴ったエッセイ集。コロナ禍を経て、新たな暮らし方を模索する全てのひと必読の書。

著者が山中湖村にある“山の家”を手ごろな価格で手に入れたのは2017年のこと。以来、東京の家との二拠点生活=デュアルライフがはじまる。コロナ禍で「この機会に景色のいいところに住んでみよう!」と思った人も少なくないはず。ここにはそんなデュアルライフのリアルが描かれている。
amazon