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自衛隊のガチな演習場なのに、一般人が立ち入りできる理由

人は誰しも、「毒に侵された苦しみの荒れ地を一人さすらいたい」、「V8エンジンを唸らせ、砂嵐吹きすさぶ大地をぶっ飛ばしたい」みたいなディストピア幻想に襲われることが、たまにあるじゃないですか? にわかにそんな気持ちになった僕は、願望を満たすべく行ってみることにしました。

山中湖村にある山のマイホームから車で10分。我が心のウェイストランド、陸上自衛隊北富士演習場へ。

ディズニーリゾート46個分! 自衛隊のガチ演習場に一般人が立ち入りできる理由とは「不発弾が落ちているかもしれないので、金属片には触れないでくださいね」_1
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富士山の麓には2つの広大な自衛隊演習場があります。ひとつは富士山東麓、静岡県御殿場市・小山町・裾野市にまたがる東富士演習場。そしてもうひとつが、北麓の山梨県富士吉田市と山中湖村にまたがる北富士演習場です。

両者ともに陸上自衛隊と米軍海兵隊が共同使用している、大規模な実弾演習場。山の家にいるとたまに、大きな音や地響きが伝わってくることがあり、はじめは雷か花火と勘違いしますが、家からほど近い北富士演習場で用いられている砲弾によるものなのです。

そんなやや物騒な現場は、自衛隊や米軍が訓練オフになる主に日曜日、地元住民に解放され、自由に立ち入ることができます。演習場のある富士山の山麓地帯は、〝入会地〟だからです。入会地とは、古くから住民の共同利用権が認められている山林や原野のこと。

村や部落など中世の共同体住民や荘園の領民は、総有する一定の山林・原野・湖沼・河川などで、放牧・狩猟・漁労・果物やキノコ、山菜の採取・伐木・採薪などをおこなうことができたのだそうです。

その昔、おじいさんが柴刈りや竹取りに行った山も、おばあさんが洗濯したりXLサイズの桃を回収したりした川も、きっと当時の入会地だったのでしょう。自衛隊や米軍が来るずっと前から存在する住民の慣習的権利は、今も尊重されているわけなのです。

微妙なのは僕のようなデュアルライフ民です。入会はもともと、先祖代々その土地で暮らす人たち限定で認められた権利。移動の激しい現代社会ではもはや、先祖代々かどうかはあまり問われないようですが、少なくてもその地域に居住している人のみが対象です。住民票が東京にある我が家のような半端なデュアルライフ組に、その権利はありません。

が、ある手段をとれば、入会権のない一般の者も山に入ることができます。入会地を管理している組合に申請し、〝入山鑑札〟というものを発行してもらえばいいのです。富士登山をするときもこうした鑑札が必要なので、ご存知の方も多いかもしれませんね。