コストカットをしなければ
銀行の支援も受けられない

会社全体としてコストカットの意識を高めることは、経営危機の際に銀行からお金を借りるうえでも必要不可欠です。

たとえば、資金繰りが厳しいときに新規事業を立ち上げるといっても、銀行は首を縦に振りません。新しい商品を開発するにも資金的余裕がなければいけないわけで、かえって火の車になると判断するのは当然です。

そうなると、まずはとにかくできるかぎりコストカットすると銀行側に説明するべきです。あわせて経営者は自分の給料を減らすなど、率先垂範して行動するのは当然の話です。

銀行が融資するか否かを判断するうえで、大前提として経営者が必死かどうかを見ます。もちろん、すべてが人情の世界とはいいませんが、危機を前にしても依然として偉そうに構えて身の回りにもメスを入れないような経営者では、銀行員の心を動かすことは難しい。

ついでにいえば、経営者は普段から金融機関と接しておくべきです。経営状態が良いときも悪いときも、たとえば最低でも3カ月に一度は銀行の支店長を訪問して現状を報告しておけば、いざというときに忌憚なく相談できます。

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雨の日になってから「傘を貸してください」と頼んでも、とくに経済危機の折には他の企業も同じように銀行に相談しているわけで、そう簡単にはいきません。

銀行はよく悪し様に語られがちですが、彼らは彼らで預金者から大事なお金を預かっているわけです。それも非常に薄い利ザヤのビジネスをしています。そうした銀行との折衝は、普段から経理の人間に任せるばかりでは不十分なケースがあります。

ただし、銀行からお金を借りるために事業を考えるのでは本末転倒です。銀行の審査を通らないような事業では話になりませんが、事業はお客さまや社会のほうを向いて考え、マーケティングとイノベーションに思考を集中させなければなりません。

ホテル業のように先行投資が必要な事業もありますが、いまはさまざまなもののソフト化が進んでいますから、お金を借りなくてもできる事業が増えています。