事業欲の強い経営者は危うい
もう一つお話しすると、私は事業欲の強い経営者は危ういと考えています。
世の中には、業績が好調な時期にどんどんお金を借りて、事業を拡張する経営者がいます。「チャンスの神様には前髪しかない」という言葉もありますが、やれるときにやるべきだと思い込んでいるのです。おそらくは楽観主義なのでしょうが、そうして会社を潰した方を何人も見てきました。
一定以下に自己資本比率を落としてしまうと、環境が変化したときに対応できません。具体的には、自己資本比率が10%を割るようならば、金融以外の業種では絶対に投資をしてはいけません。とくに、ホテルや飲食店のような先に設備投資をしなければならない業種では、どこかに踊り場をつくらなければ資金繰りがもちません。
1990年にバブルが崩壊し、2000年前後に金融危機があり、2008年にリーマン・ショック、2011年に東日本大震災があって、2020年からはコロナ禍がありました。100年に一度や1000年に一度といわれることが、これほどの頻度で起きているのです。何も起こらない前提で経営をしていたら、うまくいきません。
もちろん、BCP(事業継続計画)を立てておくことも必須です。しかし、コロナ禍を予想できた人は少ないでしょう。予想できないことが起こっても、キャッシュが手元にあれば切り抜けられます。自己資本比率をある一定以上に保つ経営が必要なのです。
写真/shutterstock












