KEIO Mental #21
ネガティブな言葉は3秒以内に上書きすればOK
脳はあとから入った情報を優先する
私たちの脳は入力と出力がワンセットだとお伝えしましたが、時には、他人のマイナス言葉を耳にする場合もあります。
たとえば、電車の中で隣に立った見知らぬ乗客のマイナスの言葉が聞こえただけでも、実は感情はネガティブになってしまうのです。練習前に誰かがふと発した「だるいなあ」という言葉も、あなたの脳に入力されると感情がネガティブになり、行動意欲と行動力を下げてしまいます。そんな練習が素晴らしいものになるとは到底思えませんよね。
マイナスの感情になり、脳からの指令のもと体に悪影響がおよぶまではコンマ何秒の世界だと言われています。
筋トレをした方はわかると思うのですが、重たいウエイトを上げるトレーニングをしていた時に、苦しくなって「無理だ」と思った次の瞬間、全身から力が抜けることがありますよね。
これはネガティブな思いや言葉がマイナス感情を生み、行動力を下げてしまうわかりやすい例です。「言霊」という言葉があるように、言葉は脳に影響を与えるのです。
もちろんネガティブな言葉を吐かないほうがいいのですが、人間ですからどうしても弱音や愚痴をふと口にしてしまうこともあります。それ自体を禁じてしまうと、今度は逆に脳に大きな負荷をかけてしまうことになります。
もしも、ネガティブな発言をしてしまったら、すぐにポジティブな言葉で上書きしてしまえばよいのです。それもできるだけ、すみやかに、極力3秒以内に。SBTではこれを「3秒ルール」と呼んでいます。
LINEを間違って送ってしまっても3秒以内に送信を取り消したら、ほとんど読まれる可能性はないでしょう。マイナスのことを口にしてしまったら3秒以内に言い換えましょう。
こんなあと出しジャンケン的な戦法がなぜ有効なのかといえば、脳はあとから口にした言葉を信用するからです。最初のマイナス言葉より、あとから発したプラス言葉を脳は信じてくれるわけです。
人間の心というのは不思議なもので、ジュースが半分あったとしたら、「もう半分しかない」と思うこともあれば、「まだ半分もある」と思う時もあります。ジュースが半分という事実は変わらないのに、その時の受けとめ方ひとつで目の前の景色が、言い換えると思いや感情が一気に変わります。
同じようにスポーツのパフォーマンスも、感情に左右されるので、感情をしっかりコントロールすることはとても大切なことなのです。
心の中に振り子があると仮定すると、その振り子は時にはプラス、時にはマイナスに振れます。その振り子がプラスの方に振れている時は、思考と体調が良い状態、行動意欲と行動力が上がっている状態です。
「このあとの練習面倒だな」と口にしてしまったら、3秒以内に「このあとは成長の時間だ」などと言い換えてみましょう。もしもため息をついてしまったら、3秒以内に思い切り笑顔になって「よっしゃー」と叫んでみたら良いのです。
無理にでもプラスの出力を心がけ、ご自身の能力を発揮しやすい状況をつくるようにしましょう。
文/吉岡 眞司 監修/西田一見 写真/shutterstock
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