「俺が見えないものを見てる」キース・リチャーズ
ロック界のスターたちはいつも一緒にいるアニーをそのうち気にしなくなり、空気のような存在になったので、心を許して自由に写真を撮らせた。
しかし、ローリング・ストーンズの1975年のツアー同行は、周囲に猛反対された。そこにはドラッグの誘惑があり、ヤンに言わせれば「みんなヤク中になって帰ってくる」のがオチなのだと。
この頃のツアー先のホテルでの記憶が一切ないというキース・リチャーズは、アニーが撮った自分の姿を見つめながらこう言った。
「俺が見えないものを見てる」
一方で失敗もある。
反核コンサートで意気投合していたブルース・スプリングスティーンやボニー・レイットやジャクソン・ブラウンらがスタジオに集まった時、アニーは平凡な写真しか撮れず、革命的な機会を逃したとベテランに怒られた。
以来、被写体である人が何者であるかを伝えることを心掛けるようになり、一度見たら忘れられないような写真を残すことを誓った。
例えば、フリートウッド・マック。世界的な成功の裏でバラバラだったメンバーたちを、一つのベッドに上下方向で並べた。
映画『ローズ』に主演したベット・ミドラーには、バラの花の絨毯を作って寝かせたり(1本1本トゲを抜いた)、ブルース・ブラザースはベルーシとエイクロイドの顔が青く塗られたりした。
だが、一番有名なのはジョン・レノンとオノ・ヨーコの写真だろう。