文化によって基準が異なる「良い子」

こうした意識も、分相応を形成する文化的自己観を通じて育まれるものです。アメリカでは、親が子に期待する「良い子」は、しっかり言葉や行動で自己主張できる子です。

それに対して、日本で親が子に期待する「良い子」は、大人に対して従順で礼儀正しく、感情や行動をちゃんとコントロールできる子であることが研究で指摘されています。だから、日本の子どもたちは、日本の文化における「良い子」になるために、自分の本当の気持ちをコントロールして、相手の立場になって考え、周囲の期待に応えられる行動を選びやすくなるのです。

そして、そのように刷り込まれた価値観や選択は、成長して大人になってからも、そう簡単には大きく変わりにくいものです。

「悔しさ」が先か「申し訳なさ」が先か…日本人が失敗するとすぐ謝ってしまう「みんなに悪いことをした」という意識_3

日本の文化で育った「日本らしい人」ほど、自分が個人的にやりたいことを頑張るモチベーションよりも、親や先生、監督やコーチ、上司、あるいは友人、ファン、SNSのフォロワーといった周りの人々が自分に期待することを頑張る、というモチベーションの方が持ちやすいのです。

これは、単純に、「もっと自分のことを優先できるエゴイストになっていい」といえば解決できることではありません。なぜなら、「周囲の期待に応えたい」という思いが、自分のエゴになってしまっているからです。