1930年代におきた学問弾圧との共通点

身近に大学関係者がいない場合は、まだ当事者意識を持てないかもしれない。

この改正案がすべての日本国民にとって他人事ではないとわかるエピソードを最後に紹介する。衆議院で法案審議中だった11月14日、廃案への機運を高めるため大学関係者(大学フォーラム、「稼げる大学」法の廃止を求める大学横断ネットワーク等)は議員会館で緊急院内集会を開催。

そこで指宿昭一弁護士は、かつての日本にも現在とよく似た時代があったことを以下のように指摘した。

「明治憲法下において大学の自治が侵害されて、何が起こったか。軍国主義が蔓延り、そして戦争への道に突入した。1933年、滝川事件。その次の年に天皇機関説事件。今、それと同じ政治社会状況にある。(中略)2つの事件を通じて大学の自治や学問の自由が破壊されてアジアへの侵略戦争へと国が進んでしまったことを私たちは決して忘れてはならない。だから何としてもこの法案を阻止しなければならない」

*滝川事件:著書が共産主義であること等を理由に京都帝国大学 瀧川幸辰教授を文部大臣が罷免・弾圧した事件
*天皇機関説事件:「主権は国家にあり天皇には無い」と唱えた憲法学者 美濃部達吉を軍人や右派政治家が弾圧した事件

11月14日に議員会館で開催された緊急院内集会で発言する指宿昭一弁護士 撮影/犬飼淳
11月14日に議員会館で開催された緊急院内集会で発言する指宿昭一弁護士 撮影/犬飼淳
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当日の集会映像。指宿昭一弁護士の該当発言は56分33秒〜

指宿弁護士は、現在の日本は太平洋戦争直前の1930年代と酷似しているという。「歴史は繰り返す」という名言の通り、国立大学法人法改正案は大学教育の崩壊にとどまらず、近い将来に日本が再び戦争当事者国になる可能性につながるほど危険な法案といえる。

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#1 大学自治を脅かし、学問の自由を奪いかねない「国立大学法人法改正案」の問題点と法案可決までの異常なスピード感

取材・文/犬飼淳