「なんで親戚が金出さないの? バカじゃん?」
――そういう意味では、こうして漫画という形で具体的に伝わることはいいのかなと思います。
相葉 そうですね。手に取りやすい媒体ではあると思うので、ヤングケアラーに興味を持ったときに、現状を知ってもらうきっかけになれたらいいなと思います。
石井 僕が書いているようなノンフィクションは読者層が限られてきますし、年齢層も高めな視点になりがちです。漫画の読者層はもっと若いと思うので、そういう意味でも、若い人たちに何を伝えていくかはすごく大事ですよね。
この漫画には3人のヤングケアラーが出てきますが、共通して描かれているのは「自分として生きていいんだよ」というメッセージです。「いい子」とか「女の子なんだから」「男の子なんだから」といった社会的な決めつけではなく、そこから離れた「自分」を生きていい。ヤングケアラーの当事者がこの漫画を読んだときに、強く感じられるのはそこなのかなと思いました。
――漫画を描くにあたり、特にこだわったところはありますか?
相葉 ヤングケアラーをテーマにしたエッセイ漫画はわりとあるんですが、デフォルメ絵で描かれることが多いので、私は汚い部分もしっかりとリアリティを持って描き込みたいなと思いました。
あとは、介護で大変なことはみんなわかっていると思うので、それだけではなく、将来への不安や、周りの大人たちへの対応のような、介護以外の大変さを表現したいと。漫画の公開後に「親戚にイライラした」「この親父がすごく嫌だ」という反響をたくさんいただいたんですが、それこそが私が伝えたかったことで、世間になかなか見えていないところなんですよね。
――作中で夜中に友人が陣中見舞いにきてくれて涙するシーンがありましたが、例えば同級生や友人にヤングケアラーの当事者がいた場合、何かできることはあると思いますか。
相葉 難しいですね。
石井 うん、できないですよね。だからといって何もしなきゃいいという話ではなくて、例えば「なんで親戚が金出さないの? バカじゃん?」という友人の軽い一言のほうが、リアルなところで言えば大きいかもしれない。
相葉 そうですね、私もたまに友達に愚痴って「親ヤバ」「親戚ヤバ」と言ってもらってました(笑)。子供同士で大したアドバイスなんてできないし、やれることといえばいつもの日常を与えてあげることくらいだと思うんです。でも、それってすごく大切で。
ヤングケアラーは本当に日常がなくなっていくので、一緒に笑ってご飯を食べたり、スタバに行ったり、そういった年相応の日常を過ごせる時間がもらえるのは、すごくありがたいと思います。