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母と祖母のおむつ交換の実体験を漫画化

――漫画『ヤングケアラー みえない私』はタイトルにあるように、ヤングケアラーをテーマにしています。どんな経緯でこの作品を描くことになったのでしょうか。

相葉キョウコ(以下、相葉)
 もともと担当編集さんとは飲み屋で知り合っていて、お互いに編集者と漫画家だと認識しながら普通に飲んでいたんですが、あるとき「何かおもしろいエピソードないの?」と聞かれて、ヤングケアラーの経験があることを伝えたんです。

そうしたら「やべえ」「それ、漫画にしましょう」ということになりまして(笑)。それが、去年の7月頃ですね。

漫画家・相葉キョウコさん(左)と作家・石井光太さん(右)
漫画家・相葉キョウコさん(左)と作家・石井光太さん(右)
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――それまでは、ヤングケアラー経験を漫画にしようと考えたことは?

相葉
 作中のキャラクター設定か何かで使えるかもくらいで、経験そのものをテーマにしようと思ったことはありませんでした。

石井光太(以下、石井) ちなみに、差し支えなければどんな実体験だったか聞いてもいいですか?

相葉 はい。私は高校生のころに母の介護に入って、そのまま祖母の介護に移っているんですが、この漫画でいうとエピソード#1と#2に自分の実体験がいくつか入っています。もちろん、すべてが実話ではないですけど。

『ヤングケアラー みえない私』より ©相葉キョウコ/集英社
『ヤングケアラー みえない私』より ©相葉キョウコ/集英社

石井 ご自身がヤングケアラーだと、いつ気づきましたか?

相葉 私も、その言葉自体はここ数年で知ったんです。母子家庭で父親もいなかったので「年長者の自分がやるしかないよね」という感覚で、当たり前のようにその生活に入っていったと思います。

石井 じゃあ、ヤングケアラーという言葉が広まりだしてから「あ、これ私だ」というような。

相葉 はい、「言われみてば」って感じでした。ただ、ヤングケアラーの中には、数年、場合によっては数十年になる方もいらっしゃって、私は、おむつ交換のような本格的なケアは母が半年ぐらい、祖母も1年弱くらいと短期間なほうだったので、そういう意味ではヤングケアラー見習いみたいなところがあります(笑)。