ネットでも関係が崩れ嫌われることを恐れる現代の小中高生
未成年者が狙われるIT上の性犯罪において、よく「グルーミング」という用語が使われることがある。グルーミングとは、もともと動物の毛づくろいを意味する言葉だが、性犯罪の文脈においては、性的な接触を図る目的で大人が子どもを手なずけることを指す。
では、犯罪者は具体的にどのような手口で小中高生に近づくのだろうか。
「中高生が悩みを打ち明け、犯罪者が心の隙に入り込むパターンがグルーミングの手法では非常に多いです。LGBTを告白した男子生徒の性被害もありましたが、現実での繋がりがある相手にはなかなか告白できないことも、ネットで繋がった相手には、『もし身の危険を感じたらブロックやアカウント削除すればいい』と簡単に心を開いてしまうのでしょう。
現実社会では頼れる人がおらず、孤独を感じている子は心にはっきりと隙間があり、どのような言葉をかけてあげればいいのかがわかりやすいため、狙われやすいのです。SNSを通じて慰めてくれたり相談に乗ってくれたりすると、距離が一気に縮まったと感じ相手を信用しやすくなってしまいます。犯罪者はそういった子どもたちの心理状況を利用し、アカウントを複数用意して、その子に合わせて対応を使い分け、グルーミングに及ぶのです」
小中高生を狙う性犯罪にはグルーミング以外の手法もあるという。
「『セクスティング』という手法で犯罪行為に及ぶケースもあります。同性の同級生や容姿のいい異性になりすまし、SNSのやり取りを重ねて、信用させたり好意を持たせたりしてから裸の写真を送らせようとするのです。
たとえば女の子同士という設定だと、犯罪者が『親が下着メーカーに勤めていてデータがほしいから胸の写真を送ってくれない?』とお願いしたり、『私、体に自信がなくて人と違うかも』とネットに出回っている裸の写真を送り、『あなたのも送って』と頼んだりするという事例がありました。
現代の中高生は嫌われることをとても恐れるため、『写真を送らないと嫌われてしまう』と関係性が崩れることに不安を感じて、指示通りにしてしまうようです。
小学校の低学年だと裸の写真を送ることがどのような意味を持つのかわからない子も多く、『裸を送れば有料スタンプがもらえるらしい』と、女子小学生が躊躇せず送ってしまったという事件もありました」