世界中にファンが多い「マーベル」の脅威
Netflixが停滞していた理由は単純だ。注力エリアの北米と欧州で課金ユーザー数が縮小していたためだ。2022年1Q、2Qは北米、欧州でそれぞれ1~2%程度連続で減少していた。
ユーザー数が減っていた背景の1つが競合する「Disney+」の台頭だった。
もともとディズニーはNetflixにコンテンツを提供していたが、2019年に独自の動画配信サービスDisney+を立ち上げた。ディズニーはアニメーションに圧倒的な強みを持つだけでなく、マーベルという超ドル箱を持っている。
Disney+の会員数は2022年に入るころには、全世界で8400万人を数えるまでに成長していた。このころNetflixは2億人を超えていたが、伸びしろをDisney+に奪われたのは確かだ。
競合に対抗する手段としてNetfixが導入したのが、広告プランだった。
当初、この動きには懐疑的な見方も多かった。理由は2つある。1つは、低価格プランを導入することで、本当に課金ユーザー数を増やすことができるのか。そしてもう1つが、安易に低価格プランを導入すると、スタンダードプランやプレミアムプランなどから広告プランに移行して、ユーザー単価を下げることにならないかということだ。
Netflixはその疑念をいい意味で裏切ることになる。
広告表示せずに事業をスタートしたことが奏功
Netflixは特に北米エリアで苦戦していた。
2022年2Qの課金ユーザー数は2021年4Qと比較すると、200万人(2.6%)少ない7300万人だ。3Qは回復する様子もなく停滞している。
しかし、広告プランを導入した後の2022年4Qの会員数は7400万人で、100万人を取りもどした。2023年2Qは7500万人となってこれまでの減少分を完全回復。3Qは7700万と大幅に増加している。
驚くべきことに、客単価も変わらなかった。2023年3Qの北米での平均客単価は16.3ドル。プラン導入前の2022年2Qの16.4ドルとほとんど変わらない。
広告慣れしていないNetflixのユーザーは、月額8ドル程度課金額が下がることよりも、広告が表示されないストレスフリーの環境を好むことが証明された。