「シューズの使い分けが出来るようになってきました」駒澤・大八木元監督
ナイキの寡占状態が続いているわけだが、今後は他社もじわりと差を縮めてくるとは思う。
かくいう私も、厚底シューズを購入した。アシックスの「メタスピードエッジ」である。スピード練習用に使うと良いとアドバイスをもらっていたので、500m×3本の練習で使ってみると、どんどんスピードが出る。本当に驚いた。
次のスピード練習は一週間後に400mの上り、下りの坂を使ってのもの。下りに入った瞬間、これまで体験したことのないスピードが出て、「これはタイムが出るわけだ」と感心してしまった。
ただし、翌日になってこれまでに痛みが出たことがない箇所に痛みが出た。これも噂通りである。膝の上から股関節にかけての部分だった。これまで使ったことのない箇所で、新鮮な痛みではあるが、ちょっと怖い気もした。
2020年前後まで、各大学の選手たちから仙骨、股関節、大腿骨といった、これまでの故障箇所とは違う部位のケガの話を聞くようになっていた。
それまでは膝下のケガ、シンスプリントや疲労骨折はよく聞いていたのだが、ケガの部位が上がっていった感じなのである。厚底シューズは、選手たちにこれまでとは違う走り方を要求していたのだ。
しかし、2022年頃になってくると、ケガの話を聞くことは以前と比べれば少なくなった。
大八木監督は「シューズの使い分けが出来るようになってきました」と話す。
長い距離を走る時にはナイキ・ペガサスのような薄めのシューズを履く。そしてスピード系の練習、あるいは試合が近づいてきたら、厚底を履くというスタイルが確立してきたという。
これからは、中学時代から厚底シューズを履いてきた世代が登場してくる。おそらく、ランニングフォームはシューズに最適化しているだろう。この世代は、5000mで12分台、10000mで26分台にどんどん突入していくはずだ。
おそらく、彼らはずっとナイキに親しんできた世代。
自分が中学、高校時代にこだわったブランドは生涯にわたって影響力を持つから(私の場合、アイビーファッションのブランドとか)、今後もナイキの優位は、よっぽどの革命が起きないと動かないだろう。
文/生島 淳 写真/Shutterstock
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