後輩として知り合った友だち

ほんの何年か前、意味や意義だけに囲まれたいというキショい思想をこねくり回して淀んでいた時、風穴を開けるかのように、突然ぽんっと友だちができた。硬そうな生地の、ひらひらしていないミニスカートを穿いていた。

前の日まではそうじゃなかったのに、今日からは友だち。友だちは仲良し。仲良しは共有。行動、思考もろともね。共有っていうのは容赦がない。昨日までの他人と己をシェアしていく。友情には己の軽量化が必要だ。いや、そんなわけはない。なぁなぁ友だち〜、これについてはどう思う〜? え〜知らな〜い! そんな会話だって自由自在だ。

初めて会ったのは、ネタ番組のオーディション会場にあるトイレの洗面台だった。無防備な場所でふいに目が合い、向こうから「はじめまして!」と挨拶をされた。その言い方があまりにぎこちなく、語尾にも締まりがなくて、「はじめまして」なんてかしこまった挨拶は言い慣れてないんだろうなと思った。

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私はとっさにしゃがみ込み、何の気なしにスカートの中を覗いてみた。おそらく「ちょっと、え、ちょっと!」が来るだろうなと思った。でもその子はひとつも嫌がらずに、逆にパンツが見えやすいよう「ほれ!」と言いながら裾を上までまくりあげた。私は驚いて「なんでやねん!」と言って、お互い我先にと笑った。ほんの5秒ほどの出来事だった。でもたったそれだけで友だちの下地が完成した。

笑ったのだからもう名前なんてどうでも良かったけど、その子は改めて自己紹介をしてきた。コンビ名も芸名もふしぎな名前だった。それにしても、名前よりも先にパンツの柄を知るなんて、今思い返しても最高にふざけた出会い方だ。私のことは知っていたようで、友だちは、その時はまだ「後輩」って名札をつけていた。