実は古着の伝統である「せどり」

高額時計など専門的な知識やタネ銭(資金)が必要なものでなく、より簡単な方法で、転売を副業としている人もいます。大昔からある「ブックオフせどり」ですね。10年以上前から存在する副業で、ブックオフと市場価格のズレを見つけて差益を得る方法です。

約10年前は「ビームせどり」と言って本のバーコードを読むと市場価格がわかる仕組みがあり、ブックオフで店員さんじゃない人がピッピッとバーコードを読み込んでる姿が見られました(店舗によっては禁止されていたところも)。

古着にはバーコードがないのでビームせどりはできませんが、同じように差益を得るため、はしごしてハードオフ(ブックオフの楽器・家電を専門的に扱う業態)やモードオフ(同・洋服を専門に扱う業態)を回る人がいます。ラグタグなどの専門店では値付けが適正なことが多いですが、モードオフなどの値付けは若干クセがあり、市場価格と乖離しているパターンがあるからです。

定価500万円が2000万円に!? 高額古着転売の“今”と古着売買の伝統「せどり」とは?_2

実際のところは、1店舗あたり数点は当たりがあるイメージでしょうか。現在のトレンドや売れ筋を理解している服好きであれば、安く値付けがされたアイテムを見つけることは容易です。

個人的な肌感ですが、グッチやプラダなどのハイブランド、もしくはアウトドアで人気のノースフェイスなどは当たりが多い印象です。ちなみにモードオフにもセールがあり、値引きされているときに買って、メルカリなどで転売すると、結構バカにならない差益が生み出せます。

この転売方法をなぜ説明したかというと、実は古着屋さんのバイヤーも同じようなことをしているからです。彼らがよく「アメリカに買い付けに行ってきた」なんて言うでしょ? アメリカで古着を買い付けて日本で売る、昔からある日本の古着流通の流れです。買い付けにはいくつかの方法があるのですが、一つはまさにこの「モードオフせどり」と全く同じ。

アメリカには、スリフトストアという「慈善団体が寄付によって集めたものを販売し、利益を活動にあてる」というリサイクルショップの元祖みたいなものがあります。各州に存在するスリフトストアは規模も尋常じゃなく、アメリカ全土で10000店舗以上あるといわれています。

定価500万円が2000万円に!? 高額古着転売の“今”と古着売買の伝統「せどり」とは?_3

最大手とされているGoodwillだけでも3000店舗の展開があるそうです。いわゆるモードオフ的な内装で不用品である古着やアンティークがずらりと並びます。ここに日本からバイヤーが訪れ、ひたすら「当たり」を見つける。車を手配してひたすらスリフト巡りを行うのがアメリカ古着買い付けの一般的な手法です。

やってることは「モードオフせどり」と全く同じですね。スリフトストアは専門業者じゃないと入ることができない、なんてこともありません。転売には是非がありますが、実は古着の買い付けってせどりなんですよね。

価格をいたずらに上げるような転売は好きになれませんが、こうしたせどりで古着市場が成り立っているのも事実。善悪の線引きが難しいところでもあるのです。