非凡な商才で億万長者に
また、トランプ氏とラマスワミ氏には億万長者という共通点もある。ラマスワミ自身は「両親は40年前に移民してきた一文無しのインド移民」と語っているが、彼の実家はインド南部ケララ州の富裕なバラモン(インド・カスト最高位の司祭階級)で、額面通りには受け取れない。
ふたりに違いがあるとすれば、ビジネスセンスかもしれない。破産を4回も経験したトランプ氏と違い、ラマスワミ氏のビジネスは順風満帆そのもので、その商才は誰もが認めるところだ。
大学時代からベンチャー企業を立ち上げていたラマスワミ氏がバイオテクノロジー企業ロイバント・サイエンシズ(Roivant Sciences)を設立したのは2014年、29歳のときのことだ。
頭のroiは、return on investment (投資収益率)からとったとされる。登記はタックス・ヘイブン(租税回避地)として名高いバミューダで、資金は彼自身も務めたことのあるヘッジファンド会社QVTから1億ドルの調達に成功している。
ロイバントの顧問にはダッシェル元上院民主党院内総務を筆頭に、民主・共和両党の名だたる政治家が名を連ね、ハーバード、イエールの威光をフルに発揮させたとはいえ、20代の無名経営者のスタート・アップとしては異例の成功と言ってもよい。
ラマスワミ氏の独創的なところは、製薬ベンチャー業界に新たなビジネスモデルを導入したことにある。新薬開発には一般的におよそ26億ドル(約3800億円)かかるうえ、3相に分けて行われる臨床試験は90%が失敗するとされる。
ラマスワミ氏は、まず大手製薬会社が所有する特許の中で、臨床試験の失敗などで採算上、放棄同然の特許を物色し、二束三文で回収する。そして、ロイバントの子会社が新たな方法でこれを再開発するという期待と情報で投資家を集め、臨床試験の前に新規株式を公開し、上昇のタイミングで売却するというものだ。