生理をコントロールするピルの使い方
例えば、仕事で大事なプレゼンがあるとか、絶対に成功させたいイベントがあるなど、ここぞというときに生理の一番重い日が重なりそう、という心配ごとは、年齢を問わず、多くの女性に共通する悩みだと思います。
中学生・高校生の女子生徒のみなさんの場合で言うと、例えば、スポーツ系の部活動に打ち込んでいる方の中には、大事な試合の日に生理が重なってしまって、思うようなパフォーマンスができなかったという経験がある方も多いのではないでしょうか。
もちろん、スポーツに限らず、林間学校や遠足など学校生活で困ったことがあるという方もいると思います。
私は婦人科のスポーツドクターとして、女性アスリートやジュニアアスリートのサポートをしていますが、やはり生理にまつわる悩みを持っている選手は少なくなく、こんな相談を受けることがよくあります。
Q.アスリートとして「ここ一番」というときにベストコンディションでのぞみたいのですが……
アスリートを対象に、月経周期のなかでどのタイミングで体調が悪いかというアンケートをとってみると、二つの時期に回答が集中します。それは、「生理中」と「生理前」です。
一方、調子がいいときはいつですかと聞くと、7割の方が「生理が終わった直後」と答える一方で「生理中に調子がいいと感じる」という方がいらっしゃるのも事実で、さらに、「月経周期による変化はあまり感じない」という方も1割弱いました。
何を言いたいかというと、自分は月経周期のどのタイミングに調子が悪いと感じるのか、まずは観察してみてほしいのです。生理中なのか生理前なのか、両方なのか。そして、調子が悪いことに対して何ができるだろうか、と対策法を考えてみるのが次のステップになります。
生理の重い日が一番つらいから、大事な試合やイベントと重なってほしくない、と考えたとします。
「生理が重い」の中身を見てみると、大きく二つに分けることができます。一つは、月経困難症─おなかが痛い、腰が痛い、気持ち悪くなる、こころの状態が落ち込むなど─によるもの。もう一つは、出血するという、物理的に困る状態ですね。
出血に対しては、生理用品のチョイスによって対策ができる程度であればそれでいいということになりますが、月経困難症が重なると、生理用品だけでは対応できません。となると、今は生理期間を変更させる目的でピルが使える時代ですから、大事なイベントの当日に生理が当たるとわかっているのに、わざわざそのままにしておくのはもったいないよね、生理の時期をずらしましょうか、となるわけです。
アスリートの場合、最初にパフォーマンスに関する悩みを相談する相手は指導者であることが多いと思われますが、女性ホルモンと運動能力や心身の不調の関連について十分に理解している指導者ばかりとはいえず、まだまだ婦人科医をはじめとした専門家からの情報発信が必要な分野だと感じています。
ジュニアの場合は特に、相談できる大人が近くにいることが大切であり、保護者のみなさんにも基本的な知識を持っておいていただけるとありがたいです。
また、アスリートの例でお話ししましたが、「パフォーマンス」には、ほかにもいろんな場面が含まれます。
現代の女性たちは、仕事はもちろん、さまざまなかたちで社会に参画していて、責任ある立場に就いている女性も増えてきています。生理の時期をずらすまでいかずとも、生理痛を緩和したり、経血の量を減らしたり、月経周期をコントロールしたりというふうに、自分の生理を自分の都合にあわせて調整するという前向きな姿勢でピルをうまく使うことも大事なスキルだと思っています。