売上高15%増の中国で何があったのか

ユニクロは業績好調の背景として、「下期(2023年3月~8月)の中国エリアは高い気温が続いた」と一言で片づけているが、これは見逃せない数字である。2023年の中国はこの60年間で最も暑い、記録的な猛暑に見舞われているからだ。

6月22日、北京では6月の気温としては観測史上最高の41.1℃を記録。7月16日、新疆ウイグル自治区では52.2℃を記録する異常事態となった。7月18日には最高気温35℃以上の猛暑日が年間27日目となる観測史上最多を記録している。1990年から2020年における猛暑日の平均年間日数は10.6日で、これまでの平均の2倍以上となった。

実は、2023年8月期上半期(2022年9月1日~2023年2月28日)までの中国事業は減収だった。これは中国がコロナ禍からの回復に遅れをとり、ゼロコロナ政策をとっていたためである。一方でユニクロの海外全体の数字を見てみると、海外事業は2023年8月期上半期の時点で、売上高が7552億円となり、前年同期間比で27.3%も伸びている。

52.2℃の殺人的猛暑の影響で2ケタ増収…異常気象がユニクロの業績を左右する意外な理由とシェア拡大を担うあの定番アイテム_3

上期の海外事業の伸長に一役買ったのはヨーロッパとアメリカだ。

ヨーロッパはロシアからのエネルギー供給が途絶え、ドイツやフランス、イギリスなどの電気料金が高騰した。イタリアは一時、2020年と比較して電気代が3倍に暴騰したと言われている。

世界的なエネルギー危機は化石燃料価格を押し上げ、アメリカも電気代やガソリン価格の高騰とは無縁ではいられなかった。一部の地域では電気代が3倍近く上昇したと言われている。

2023年8月期のユニクロのアメリカ事業の売上高は、前年同期の1.4倍となる1639億円、ヨーロッパは1.5倍の1913億円だった。どちらも大幅に数字を伸ばしている。エアコンやストーブに頼らずに過ごそうとすると、機能的な服が必要になる。その結果、ヨーロッパを中心に特需とも言える状況が起こったと目されている。