がん終末期は、緩和ケアに対応した施設選びが必須
痛みやつらさを和らげる緩和ケアを、病院とほぼ同じように最期まで行うことができる施設は限られている現状があります。
緩和ケアでは、痛みやつらさを緩和するために医療系麻薬を使用することがあります
が、この医療系麻薬の使用が施設によって問題になることがあります。
医療系麻薬を使うときには、基本的には決まった時間に定期的に使いつつ、急な痛みやつらさに対しては追加で使う使い方が一般的です。急な症状は、いつ出てくるかわからないため、急性の症状に応じて使う医療系麻薬は、24時間いつでも使える必要があります。
ところが施設によっては、夜間には医療系麻薬を使えないという問題が出てくることがあります。施設での医療系麻薬の管理は、主に看護師が行うことが多いのですが、夜間は看護師が常駐していない施設が多いためです。
本来は、本人に処方されている医療系麻薬を介護士のサポートで内服することは問題ないのですが、管理上の観点から、施設を運営する法人の方針によって禁止しているところが多いのが現状です。
夜間の急な対応として医療系麻薬が使えないことは、緩和ケアにおいて大きな問題になりますが、運営する施設がその重要性を把握していないことがあるのも事実です。実際に、私の患者さんの中でも、「医療系麻薬が使える」ということで施設に入居したものの、夜間は使えないということが入居後になって発覚し、家族が医療系麻薬を飲ませるために、夜間に施設に通わざるを得ないケースがありました。
また、医療系麻薬は、飲み薬が飲めなくなったら貼り薬に変えるのですが、貼り薬だけでは緩和できない場合には、注射の薬が必要になります。その対応についても、先述のように、法人の方針によって、施設の中では制限がかかることがあります。
こうしたことから、がん終末期で最期まで施設で過ごしたいと思った場合には、緩和ケアに最期まで十分に対応した施設に入居する必要があります。
「看護師がいるから何かあっても安心」と安易に考えず、具体的に何をどこまでしてもらえるのか、確認することが大事です。
もしがん末期の施設選びに迷ったら、「医療系麻薬が夜間も使えるかどうか」「薬が飲めなくなった時に注射ができるかどうか」、そして「最期までその施設にいられるのかどうか」を施設側に確認してみましょう。がん終末期で最期まで施設で過ごしたいと思ったら、その3点が欠かせないポイントになります。
文/中村明澄 写真/shutterstock
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