精神的に安定するのが自宅の良さ

まずは、自宅。自宅の最大のメリットは、何と言っても自由に過ごせることにあります。

住み慣れた環境で、自分らしい生活を送ることができるという点では、病院や施設にない、家ならではの居心地の良さを感じられます。面会時間も決まっていないため、会いたい人にはいつでも会えるし、起床時間や就寝時間など決められたスケジュールもありません。

朝寝坊しても、夜更かししてドラマを見続けても、自宅なら何の問題もなし。食べたいものを自由に食べられるのも大きなメリットです。入院生活では難しいお酒やタバコ、刺身などのナマモノも、本人が望むなら自由に楽しめます。今日はパンが食べたいと思ったらパンを食べたらいいし、好きなタイミングでコーヒーも飲める。自分の過ごしたいように過ごすことができます。

また、慣れ親しんだ自分の空間では、入院している時より気持ちが元気になって、精神的にも安定する人が多いようです。これは科学的根拠のないことですが、経験上、自宅という心からくつろげる空間に身を置くことで、当初予想された寿命よりも結果的に長生きする傾向があるように感じます。

自宅で過ごす安心感やリラックス感がもたらす精神的な影響だと思いますが、病院にいる時より目に見えて元気になられる患者さんの姿を、これまで何人も目にしてきました。

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病院ならではの安心感

次に、病院。自宅より病院を選ばれる方のお話を聞くと、「常に医療者がそばにいる状態に安心できるから」という声が多く聞かれます。

病院では、ナースコールのボタンを押すだけで、24時間いつでも看護師が様子を見に来てくれる環境と、診療時間外にも入院患者の急変に対応する当直医師がいる環境があります。

訪問診療や訪問看護では、24時間体制であっても、実際に家を訪問するまでには30分〜1時間程度の時間を要するため、「何かあったらすぐに診てほしい」という人や「医師や看護師に常にそばにいてほしい」という方は、自宅より病院のほうが安心して過ごせると思います。

また、「病院にいたほうが治るんじゃないか」という期待や不安が残っている方も、その気持ちが解消されないようなら、無理して家に帰ることを選択しなくていいと思います。なぜなら不安感を持ったまま家に帰っても、モヤモヤしたままでは安心して穏やかに過ごせる自宅の良さがなくなってしまいます。

もしモヤモヤしたものが残っていたら、ぜひ医療者に相談して、不安を解消した後に、どこで過ごすかという選択を考えると良いでしょう。