局は違えど『内P』のDNAを受け継ぐ『有吉の壁』
有吉は2020年2月、自身のラジオ番組で『有吉の壁』のレギュラー放送が4月から始まることを話題にあげている。コケるリスクを覚悟のうえで純度の高いお笑い番組をゴールデンでやる意義を説き、「こういうのは若手、中堅のために一回引き受けないといけない仕事だな」と語っていたのだ。
実際、『有吉の壁』は芸人たちがブレイクするチャンスの場となっているが、どちらかというと若手よりも、売れずにくすぶっていたり一発屋のようになってしまっていたりする中堅芸人たちが、脚光を浴びる番組として機能しているように感じる。
シソンヌやタイムマシーン3号など、以前から実力は高く評価されながらも突き抜けていなかった芸人や、パンサーやとにかく明るい安村といった一度は売れたものの伸び悩んでいた芸人が、長いキャリアで地道に培ってきた芸を次々と開花させていったのである。
どん底時代に『内P』で救われた有吉が、『有吉の壁』で若手芸人の地力を伸ばしてあげたり、中堅芸人の才能にスポットを当ててあげたりしているさまは、実に感慨深い。
かつて自分が内村にしてもらったことを、今度は自分が下の世代にしてあげているのは、お笑い界への恩返しとも言えるだろう。
――有吉と内村、最近はほとんど共演していないので、昔のバラエティ番組を知らない人々からすれば、なぜ紅白司会という晴れ舞台のコメントで、有吉が内村に対して「尊敬」「目標」という言葉を述べたのか、不思議だったに違いない。
しかし、『内P』のDNAを受け継いだ『有吉の壁』に有吉が力を注いでいることこそ、内村を今でもリスペクトし続けている表れなのではないだろうか。
文/堺屋大地